December 25, 2003 Vol. 349 No. 26
多発性骨髄腫での骨溶解性病変の発生における Wnt シグナル伝達拮抗物質 DKK1 の役割
The Role of the Wnt-Signaling Antagonist DKK1 in the Development of Osteolytic Lesions in Multiple Myeloma
E. Tian and Others
骨髄腫細胞は,骨芽細胞,破骨細胞,あるいはその両者の機能に影響を与える因子を分泌している可能性がある.
新たに多発性骨髄腫と診断された患者および対照被験者の骨髄から分離した形質細胞について,オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いたプロファイリング,生化学的解析,免疫組織学的解析を行って,骨溶解性病変の分子学的決定因子を同定した.
対照被験者 45 例,磁気共鳴画像法(MRI)で局所骨病変が確認できなかった多発性骨髄腫患者 36 例,および MRI により病変を確認できた患者 137 例について検討した.分離した骨髄腫細胞から得られた約 10,000 の遺伝子のうち,異なる発現パターンを示す 57 遺伝子が,患者 2 群の識別に使用できた.データセットにおける多重比較を考慮するため有意水準を補正する順列解析(permutation analysis)により,局所病変を有する患者に由来する形質細胞で,これら 57 遺伝子中 4 遺伝子が有意に過剰発現していることが実証された.これらの遺伝子中の 1 遺伝子 dickkopf1(DKK1)と,その発現蛋白で,骨芽細胞機能に関連付けられてきた分泌因子 DKK1 について詳細に検討した.骨髄生検標本の免疫組織学的解析から,骨髄腫細胞のみが検出可能な量の DKK1 を含むことが示された.多発性骨髄腫患者の骨髄形質細胞および末梢血中の DKK1 高値は,DKK1 の遺伝子発現パターンに相関し,局所骨病変の存在に関連していた.組換えヒト DKK1 または DKK1 高値の骨髄血清は,in vitro で骨芽細胞前駆細胞の分化を阻害した.
骨髄腫細胞による骨芽細胞の分化阻害物質 DKK1 の産生は,多発性骨髄腫患者の溶解性骨病変の存在に関連する.