December 25, 2003 Vol. 349 No. 26
外傷患者におけるカナダ頸椎規定と NEXUS 低リスク判定基準の比較
The Canadian C-Spine Rule versus the NEXUS Low-Risk Criteria in Patients with Trauma
I.G. Stiell and Others
カナダ頸椎規定(Canadian C-Spine [cervical-spine] Rule: CCR)と全カナダ救急時 X 線撮影利用研究(National Emergency X-Radiography Utilization Study: NEXUS)の低リスク判定基準(Low-Risk Criteria: NLC)は,外傷患者に頸椎 X 線撮影を行うさいの指針となる決定基準である.この 2 つの決定基準が,臨床成績という点でどの程度同等であるかは不明である.
カナダの 9 ヵ所の救急診療部において,容体が安定し意識のある外傷患者を対象に,CCR と NLC を比較する前向きコホート研究を行った.CCR と NLC は,X 線撮影前の患者に対して 394 人の医師が評価した.
患者 8,283 例のうち,169 例(2.0%)には臨床的に重大な頸椎損傷があった.845 例(10.2%)については,医師は,CCR アルゴリズムに必要な可動域の評価をしていなかった.これらの不確定症例を除外した解析では,CCR は NLC よりも損傷に対する感度が高く(99.4% 対 90.7%,P<0.001),特異度も高く(45.1% 対 36.8%,P<0.001),CCR を用いることで X 線検査実施率が低くなったと考えられた(55.9% 対 66.6%,P<0.001).全患者を含めた二次解析では,不確定症例が全例 CCR 陽性と仮定すると,CCR の感度は 99.4%,特異度は 40.4%であった(いずれも NLC との比較で P<0.001).不確定症例が全例 CCR 陰性と仮定すると,CCR の感度は 95.3%(NLC との比較で P=0.09),特異度は 50.7%(P=0.001)であった.CCR では重大な損傷を有する患者を 1 例見落とし,NLC では 16 例見落とすと考えられた.
容体が安定し覚醒している外傷患者では,頸椎損傷に対する感度と特異度に関して CCR は NLC より優れており,CCR の使用は X 線検査実施率減少につながると考えられる.