August 21, 2003 Vol. 349 No. 8
急性心筋梗塞に対する冠動脈形成術と線溶療法との比較
A Comparison of Coronary Angioplasty with Fibrinolytic Therapy in Acute Myocardial Infarction
H.R. Andersen and Others
ST 部分の上昇を伴う心筋梗塞の治療において,血管形成術の設備のある病院に収容された患者では,第一に行う血管形成術のほうが線溶療法よりも優れていると考えられている.地域病院から侵襲治療が可能なセンターへの移送を必要とする患者にもこの利益が当てはまるどうかは明らかにされていない.
急性心筋梗塞の患者 1,572 例を,血管形成術,または静脈内アルテプラーゼの急速投与に無作為に割付けた;1,129 例は 24 ヵ所の搬送先の病院で登録され,443 例は 5 ヵ所の侵襲治療センターで登録された.試験の主要エンドポイントは,30 日の時点での死亡,再梗塞の臨床所見,後遺症の残る脳卒中の複合とした.
搬送先の病院で無作為割付けを受けた患者のうち,血管形成術群の患者の 8.5%が主要エンドポイントに達したのに対し,線溶療法群の患者では 14.2%であった(P=0.002).結果は侵襲治療センターで登録された患者でもほぼ同じで,血管形成術群の患者の 6.7%が主要エンドポイントに達したのに対し,線溶療法群の患者では 12.3%であった(P=0.05).全患者では,血管形成術後のより良好な転帰は,主に再梗塞率の低下(血管形成術群 1.6% 対 線溶療法群 6.3%,P<0.001)によるものであり,死亡率(6.6% 対 7.8%,P=0.35)と脳卒中発生率(1.1% 対 2.0%,P=0.15)には有意差は認められなかった.患者の 96%は,搬送先の病院から 2 時間以内に侵襲治療センターへ移送された.
第一に行う血管形成術を目的とした侵襲治療センターへの患者の移送を伴う再灌流戦略は,移送が 2 時間以内に行われる場合,移送をせずにその場で行われる線溶療法よりも優れている.