カナダの脳卒中ネットワーク登録におけるインフォームド・コンセントの実施困難性
Impracticability of Informed Consent in the Registry of the Canadian Stroke Network
J.V. Tu and Others
いくつかの行政区域の議員と倫理委員会では,患者を臨床試験登録に組み入れる前に,すべての患者から文書によるインフォームド・コンセントを得ることを要求している.しかし,そうした要求が,臨床試験登録の使用や,登録データの一般性の程度に及ぼす影響は明らかではない.
カナダ 20 ヵ所の主要な脳卒中施設による前向きな登録,カナダ脳卒中ネットワーク登録(Registry of the Canadian Stroke Network)において,2001 年 6 月~2002 年 12 月に行われたインフォームド・コンセントを得るための包括的な試みが,総参加率および参加した患者の特性に及ぼした影響について検討した.
各施設には神経学的研究の看護師コーディネーターが存在したにもかかわらず,総参加率(すなわちすべての候補者からの同意取得率)は,研究の第 I 相(2001 年 6 月~2002 年 2 月)では適格患者 4,285 例のうち 39.3%であり,第 II 相(2002 年 6 月~12 月)では適格患者 2,823 例のうち 50.6%であった.多くの患者は,同意について交渉するまでに死亡または退院した.また,重大な選択バイアスがみられ,院内死亡率は,登録患者(6.9%)では非登録患者(21.7%)よりもかなり低かった(院内死亡の相対リスク 3.13;95%信頼区間 2.65~3.70;P<0.001).登録開始から 2 年のあいだに,インフォームド・コンセント関連の問題に,推定で約 500,000 カナダドルが費やされた.
脳卒中登録への参加の文書によるインフォームド・コンセントの取得は,登録患者が各施設における典型的な脳卒中患者を代表していないという,重大な選択バイアスにつながっていた.これらの知見は,プライバシーに関する法律制定や,最小限のリスクしか伴わない観察研究に対するインフォームド・コンセントの省略を認める方針の必要性を強調している.