HDL コレステロールに対するコレステリルエステル転送蛋白阻害薬の効果
Effects of an Inhibitor of Cholesteryl Ester Transfer Protein on HDL Cholesterol
M.E. Brousseau and Others
高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値の低下は冠動脈性心疾患の主要な危険因子の 1 つであるが,HDL コレステロール値を十分に上昇させる治療法はない.HDL コレステロール値を上昇させる方法として,コレステリルエステル転送蛋白(CETP)を阻害することが提案されている.
CETP の強力な阻害薬であるトルセトラピブ(torcetrapib)が血漿中のリポ蛋白濃度に及ぼす影響を検討することを目的として,HDL コレステロール値の低い(<40 mg/dL [1.0 mmol/L])被験者 19 例を対象に,単盲検プラセボ対照試験を実施した.19 例のうち 9 例には,アトルバスタチン 20 mg/日での治療も行った.被験者全例にプラセボを 4 週間投与したあと,引き続きトルセトラピブ 120 mg/日を 4 週間投与した.アトルバスタチンを投与しなかった被験者のうち 6 例には,第 3 段階として,トルセトラピブ 120 mg を 1 日 2 回 4 週間投与した.
トルセトラピブ 120 mg/日の投与により,血漿中 HDL コレステロール濃度が,アトルバスタチン投与群で 61%(P<0.001),アトルバスタチン未投与群で 46%(P=0.001)増加した.トルセトラピブ 120 mg を 1 日 2 回投与すると,HDL コレステロールが 106%増加した(P<0.001).また,トルセトラピブにより,アトルバスタチン投与群で低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値が 17%低下した(P=0.02).さらに,トルセトラピブにより,HDL・LDL サブクラスのコレステロール分布が有意に変化し,その結果,各群で HDL と LDL の平均粒子サイズが増加した.
HDL コレステロール値が低い被験者では,トルセトラピブを用いて CETP を阻害すると,HDL コレステロール値が顕著に増加し,LDL コレステロール値が低下した.これは,トルセトラピブを単剤療法として投与した場合にも,スタチンと併用投与した場合にも当てはまった.