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June 3, 2004 Vol. 350 No. 23

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トロントでの重症急性呼吸器症候群の集団発生時における拡大防止を目的とした公衆衛生対策
Public Health Measures to Control the Spread of the Severe Acute Respiratory Syndrome during the Outbreak in Toronto

T. Svoboda and Others

背景

トロントは,重症急性呼吸器症候群(SARS)の北米で最大の集団発生地域であった.SARS の感染様式や,感染防止策が公衆衛生に与えた影響を理解することは,衛生関係者らが今後の集団発生に備えるさいに役立つであろう.

方 法

SARS の症例,隔離状況,電話相談の記録を,感染防止策と関連付けて解析した.集団発生の 2 つの局面を比較した.

結 果

トロント公衆衛生局は,SARS の可能性がある症例 2,132 例を調査し,SARS 患者と接触した 23,103 人を隔離が必要な者として特定した.SARS ホットラインに寄せられた 316,615 件の電話を記録した.トロントでは,225 人の住民が SARS の症例定義を満たし,旅行に関連して感染した 3 例を除いたすべての症例で,香港から帰国した発端患者との関連が確認された.SARS は,トロントにある 11 ヵ所(58%)の救急病院に拡大した.基礎疾患を有する入院患者で認識されていなかった SARS により,集団発生の再来,すなわち集団発生の第 2 期が引き起されたが,入院患者を厳重に監視することで最終的に抑制することができた.トロント公衆衛生局の感染防止策により,病院外および家庭外で SARS の曝露を受けた人の数は,感染防止策実施前(第 1 期)の 20 例(13%)から,実施後(第 2 期)には 0 例に減少した.病棟で曝露した患者数は,第 1 期の 25 例(17%)から第 2 期には 68 例(88%)に増加し,集中治療室で曝露した人の数は,第 1 期の 13 例(9%)から第 2 期には 0 例(第 2 期)に減少した.地域社会での伝播(病院外での感染連鎖の拡がり)は,集団発生の第 2 期では有意に減少した(P<0.001).

結 論

トロントにおける SARS 感染は,主に患者との接触があった病院内と家庭内に限られた.保健当局は,SARS 1 症例につき,その患者と接触した者を最大100 人隔離し,可能性のある症例を 8 例調査することを想定すべきである.集団発生時には,SARS に似た症状を示す疾患を院内で厳重に監視し,感染防止策を強化することが重要である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 350 : 2352 - 61. )