October 21, 2004 Vol. 351 No. 17
喘息感受性におけるプロスタノイド DP 受容体変異の役割
Role of Prostanoid DP Receptor Variants in Susceptibility to Asthma
T. Oguma and Others
プロスタノイド DP 受容体遺伝子(PTGDR)を含むヒトゲノム領域(14q22.1)が喘息と関連することが,先行する遺伝学的研究で明らかにされている.マウスモデルの研究では,プロスタノイド DP 受容体が喘息の表現型の発現に必要であることが示唆されている.喘息と PTGDR 遺伝子の機能変異との関連付けは,これらの報告を結び付けるものである.
白人の喘息患者 518 例と白人の対照被験者 175 例,黒人の喘息患者 80 例と黒人の対照被験者 45 例を対象とした症例対照研究において,疾患に関連する PTGDR の転写に影響を及ぼす遺伝子変異の組み合せを同定し,評価した.
PTGDR とその近傍に,新規の一塩基多型(SNP)を 4 個,すでに報告されている SNP を 2 個同定した.これらの SNP から,3 個の SNP で決る,出現頻度の高い 4 種類のハプロタイプが定義された.これらのハプロタイプは,PTGDR の転写を補助する能力が異なり,DNA 結合蛋白親和性プロファイルも異なっていた.それぞれの PTGDR SNP は,両集団で喘息と有意に関連していた.特定の PTGDR ハプロタイプは,白人を対象とした大規模な症例対照研究において喘息の診断と有意に関連しており(P=0.002),この知見は黒人を対象とした集団でも確認された(P=0.01).ハプロタイプの組み合せ(ディプロタイプ)の多変量解析から,転写効率の低いハプロタイプを少なくとも 1 コピー有する者は,白人(オッズ比 0.55;95%信頼区間 0.38~0.80;P=0.002),黒人(オッズ比 0.32;95%信頼区間 0.12~0.89;P=0.03)ともに,転写効率の低いハプロタイプのコピーを有さない被験者よりも,喘息のリスクが低いことが示された.
われわれの機能的・遺伝学的知見は,PTGDR を喘息感受性遺伝子として同定するものである.