October 28, 2004 Vol. 351 No. 18
成人の細菌性髄膜炎患者における臨床的特徴および予後因子
Clinical Features and Prognostic Factors in Adults with Bacterial Meningitis
D. van de Beek and Others
市中感染性の急性細菌性髄膜炎に罹患した成人患者において,その臨床的特徴および予後因子を明らかにするため,オランダで全国規模の研究を行った.
1998 年 10 月~2002 年 4 月の期間に,脳脊髄液培養で市中感染性の急性細菌性髄膜炎と確認されたオランダ人患者全員を前向きに評価した.全員に入院時と退院時に神経学的検査を行い,転帰を,不良(退院時のグラスゴー転帰スケール [Glasgow Outcome Scale] のスコアが 1~4 点と定義)または良好(5 点)に分類した.ロジスティック回帰分析により転帰不良の予測因子を明らかにした.
696 例の市中感染性の急性細菌性髄膜炎を評価した.病原菌は,Streptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌,全症例の 51%)と Neisseria meningitidis(髄膜炎菌,37%)がもっとも多かった.発熱,項部硬直,精神状態の変化という典型的な三徴候が発現したのは全症例のわずか 44%であったが,95%で,頭痛,発熱,項部硬直,精神状態の変化の 4 つの症状のうち 2 つ以上が発現した.入院時,患者の 14%が昏睡状態にあり,33%が局所的な神経異常を示した.全死亡率は 21%であった.死亡率は,肺炎球菌性髄膜炎患者のほうが髄膜炎菌性髄膜炎患者よりも高かった(30% 対 7%;P<0.001).全症例の 34%で転帰が不良であった.転帰不良の危険因子は,高齢,耳炎または副鼻腔炎の存在,発疹がないこと,入院時のグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale)のスコアが低いこと,頻脈,血液培養陽性,赤血球沈降速度亢進,血小板減少,脳脊髄液中の白血球数低値であった.
市中感染性の急性細菌性髄膜炎で受診する成人では,発熱,項部硬直,精神状態の変化という典型的三徴候の感度は低いが,ほぼ全員が,頭痛,発熱,項部硬直,精神状態変化の 4 つの症状のうち 2 つ以上を呈している.細菌性髄膜炎に関連する死亡率は依然高く,転帰不良のもっとも強い危険因子は,全身状態の不良を示唆する要因,意識レベルの低下,および S. pneumoniae による感染である.