総合ビタミン剤の補給と HIV 疾患の進行および死亡に関する無作為試験
A Randomized Trial of Multivitamin Supplements and HIV Disease Progression and Mortality
W.W. Fawzi and Others
観察研究の結果から,微量栄養素の状態がヒト免疫不全ウイルス(HIV)疾患の進行の規定要因であることが示唆されている.
タンザニアのダルエスサラームで,HIV に感染した妊婦 1,078 例を二重盲検プラセボ対照試験に組み入れ,ビタミン A(ビタミン A の前駆体と β カロテン),総合ビタミン剤(ビタミン B,C,E),またはその両方を毎日補給することが,HIV 疾患の進行に及ぼす影響を検討した.検討は生存モデルを用いて行った.生存に関する追跡期間の中央値は 71 ヵ月であった(四分位範囲46~80).
世界保健機構(WHO)分類による病期 IV 期へ疾患が進行したか死亡した(主要転帰)のは,総合ビタミン剤投与群の女性 271 例では 67 例であったのに対し,プラセボ投与群の女性では 267 例中 83 例であった(24.7% 対 31.1%;相対リスク 0.71;95%信頼区間 0.51~0.98;P=0.04).総合ビタミン剤の投与は,後天性免疫不全症候群に関連した死亡(0.73;95%信頼区間 0.51~1.04;P=0.09),WHO 病期 IV 期への進行(0.50;95%信頼区間 0.28~0.90;P=0.02),III 期以上への進行(0.72;95%信頼区間 0.58~0.90;P=0.003)の相対リスクの減少とも関連していた.総合ビタミン剤により,CD4+ 細胞数と CD8+ 細胞数が有意に増加し,ウイルス量が有意に減少した.これに対し,ビタミン A の単独投与の効果は小さく,大半については,プラセボで得られた効果と有意差はなかった.ビタミン A を総合ビタミン剤療法に加えると,検討したエンドポイントの一部で利益が減少した.
総合ビタミン剤の補給は,HIV 感染女性において,HIV 疾患の進行を遅らせ,抗レトロウイルス療法の開始を遅延させるのに,効果的でコストの低い手段である.