December 16, 2004 Vol. 351 No. 25
急性感染症またはワクチン接種後の心筋梗塞と脳卒中のリスク
Risk of Myocardial Infarction and Stroke after Acute Infection or Vaccination
L. Smeeth and Others
慢性炎症が,アテローム性動脈硬化症を促進する可能性があることが示されている.われわれは,急性感染症およびワクチン接種により,血管イベントの短期リスクが上昇するという仮説を検証した.
一般的なワクチン接種後および自然発生的な感染後の心筋梗塞と脳卒中のリスクを検討するために,ケース・シリーズ法を用いて個人内比較を実施した.研究は,500 万例以上の患者の電子化された医療記録を含む,英国一般診療研究データベース(United Kingdom General Practice Research Database)に基づいて行った.
インフルエンザワクチン接種を受けた人で,心筋梗塞をはじめて起した患者計 20,486 例と脳卒中をはじめて起した患者計 19,063 例を解析に組み入れた.インフルエンザ,破傷風,肺炎球菌のワクチン接種後に,心筋梗塞や脳卒中のリスクは上昇しなかった.しかし,両イベントのリスクは,全身症状を伴う気道感染の診断後大きく上昇し,最初の 3 日間がもっとも高かった(心筋梗塞の発生率比 4.95,95%信頼区間 4.43~5.53;脳卒中の発生率比 3.19,95%信頼区間 2.81~3.62).リスクは,その後数週間で徐々に下降した.尿路感染症の診断後にもリスクは有意に上昇したが,程度はより小さかった.心筋梗塞と脳卒中の再発に関する知見は,初回イベントに関する知見と類似していた.
今回の知見は,急性感染症が血管イベントのリスクの一時的な上昇と関連しているという説を支持するものである.これに対し,インフルエンザ,破傷風,肺炎球菌のワクチン接種による血管系イベントのリスクの上昇は,検出可能な程度のものではない.