August 19, 2004 Vol. 351 No. 8
米国の組織ドナーにおける HBV,HCV,HIV,HTLV によるウイルス血症の確率
Probability of Viremia with HBV, HCV, HIV, and HTLV among Tissue Donors in the United States
S. Zou and Others
米国の組織バンクは,組織移植片からのウイルス感染の伝播リスクを減少させるために,さまざまな点検・検査手順を導入している.組織ドナーが,検出されないものの,B 型肝炎ウイルス(HBV),C 型肝炎ウイルス(HCV),ヒト免疫不全ウイルス(HIV),ヒト T 細胞白血病ウイルス(HTLV)によるウイルス血症を起している現在の確率を推定した.
B 型肝炎表面抗原(HBsAg),抗 HIV 抗体,抗 HCV 抗体,抗 HTLV 抗体の陽性率を,米国の 5 つの組織バンクに組織を提供したドナー 11,391 例で確定した.データは,初回献血者のデータと比較し,組織ドナーにおける推定感染率を算出した.組織提供時のスクリーニングでは検出されなかったがウイルス血症を起している確率は,これらの推定感染率とウィンドウ・ピリオドに基づいて推定した.
組織ドナーにおいて確認された検査陽性率は,抗 HIV 抗体が 0.093%,HBsAg が 0.229%,抗 HCV 抗体が 1.091%,抗 HTLV 抗体が 0.068%であった.感染率はそれぞれ,100,000 人・年当り,30.118,18.325,12.380,5.586 と推定された.組織提供時にウイルス血症を起している確率は,推定でそれぞれ 1/55,000,1/34,000,1/42,000,1/128,000 であった.
HBV,HCV,HIV,HTLV の感染率は,一般集団よりも組織ドナーのほうが低い.しかし,組織提供時に検出されないがウイルス血症を起している確率は,初回供血者よりも組織ドナーのほうが高い.組織ドナーのスクリーニングに核酸増幅検査を加えることで,提供された組織のレシピエントがこれらのウイルスに感染するリスクが減少するであろう.