活動性クローン病に対するサルグラモスチム
Sargramostim for Active Crohn's Disease
J.R. Korzenik and Others
造血因子の 1 つであるサルグラモスチム(sargramostim)は,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子であり,腸管で先天免疫系の細胞を刺激する.予備試験では,サルグラモスチムがクローン病に有効である可能性が示唆されている.この新しい治療法を評価するために,われわれは無作為プラセボ対照試験を行った.
中等度~重度の活動性クローン病患者 124 例を,1 日に 6 μg/kg のサルグラモスチムまたはプラセボのいずれかを 56 日間皮下投与する群に,2:1 の割合で無作為に割付けた.抗菌薬とアミノサリチル酸製剤の投与は認めたが,免疫抑制薬とグルココルチコイドの投与は禁止した.主要エンドポイントは臨床反応とし,治療終了時(57 日目)に,クローン病活動指数(Crohnユs Disease Activity Index ; CDAI)がベースライン時から 70 ポイント以上低下することと定義した.その他のエンドポイントは,疾患の重症度の変化,健康関連 QOL,有害事象とした.
臨床反応に関する主要エンドポイントは,57 日目に CDAI スコアがベースライン時から 70 ポイント以上低下することと定義したが,その達成率について,サルグラモスチム群とプラセボ群のあいだで有意差はみられなかった(54% 対 44%,P=0.28).しかし,57 日目に CDAI スコアがベースライン時から 100 ポイント以上低下することと定義した臨床反応に関する副次的エンドポイント(48% 対 26%,P=0.01)と,57 日目の CDAI スコアが 150 点以下であることと定義した寛解に関する副次的エンドポイント(40% 対 19%,P=0.01)については,サルグラモスチム群のほうがプラセボ群よりも達成率が高かった.治療 29 日目と治療後 30 日の時点では,これらの臨床反応と寛解の達成率はいずれも,サルグラモスチム群のほうがプラセボ群よりも有意に高かった.また,サルグラモスチム群では QOL に関しても有意な改善がみられた.軽度~中等度の注射部位反応と骨痛は,プラセボ群よりもサルグラモスチム群でより多くみられ,サルグラモスチム群の 3 例では,治療に関連する可能性があるか,関連する可能性が高い重篤な有害事象がみられた.
この試験では,主要エンドポイントについて肯定的な結果は得られなかった.しかし,副次的エンドポイントの知見から,サルグラモスチム療法により,活動性クローン病患者の疾患の重症度が軽減し,QOL が改善することが示唆される.