February 24, 2005 Vol. 352 No. 8
モザンビークのベイラにおける経口コレラワクチンの集団投与の有効性
Effectiveness of Mass Oral Cholera Vaccination in Beira, Mozambique
M.E.S. Lucas and Others
新世代の経口コレラワクチンは,サハラ以南のアフリカにおいてコレラの抑制を改善することが期待されている.しかし,コレラに感染した多くのアフリカ住民ではヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染率が高いことから,ワクチンにより達成可能な予防水準については疑念がもたれている.HIV の血清陽性率が 20~30%であるモザンビークの都市ベイラにおいて,遺伝子組換えコレラトキシン B サブユニットと死菌から成る(rBS-WC)経口コレラワクチンを用いた,集団ワクチン投与プログラムを評価した.
2003 年 12 月~2004 年 1 月の期間,ベイラのエストゥロ(Esturro,人口 21,818 人)において,妊婦を除く 2 歳以上の住人を対象に,rBS-WC ワクチンを 2 回投与するレジメンで集団投与を実施した.その後,2004 年 1~5 月にベイラで起ったエルトール小川型コレラの集団発生時に,症例対照研究でワクチンの予防効果を評価した.ワクチンの予防水準を推定するために,培養でコレラが確認された治療を要する重篤な患者と,年齢と性別をマッチさせた下痢の治療を受けていない同じ地域の対照者とで,事前のワクチン投与率を比較した.
コレラ患者 43 例と対照者 172 人でワクチンの有効性を評価した.rBS-WC ワクチン投与を 1 回以上受けたことは,78%の予防効果と関連していた(95%信頼区間 39~92%,P=0.004).ワクチンは,5 歳未満の小児や高齢者においても同様に有効であった.バイアスを検出するためにデザインした症例対照研究を並行して実施し,同一集団で治療を受けた非コレラ性下痢患者と下痢のない対照者とを比較したところ,rBS-WC ワクチン投与に関連した予防効果はみられなかった.
rBS-WC ワクチンは,HIV 感染率の高いサハラ以南の都市部のアフリカ住民において,臨床的に重要なコレラに対する効果が非常に高かった.