The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

November 3, 2005 Vol. 353 No. 18

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

クローン病に対するナタリズマブを用いた寛解導入療法と維持療法
Natalizumab Induction and Maintenance Therapy for Crohn's Disease

W.J. Sandborn and Others

背景

ナタリズマブ(natalizumab)は,α4 インテグリンに対するヒト化モノクローナル抗体であり,白血球の炎症組織への接着と移行を阻害する.

方 法

活動性クローン病患者を対象に,寛解導入療法および維持療法としてのナタリズマブを評価するために,2 つの対照試験を実施した.最初の試験では,患者 905 例を,ナタリズマブ 300 mg またはプラセボのいずれかを 0,4,8 週目に投与する群に無作為に割付けた.主要転帰は臨床反応とし,10 週目の時点でのクローン病活動指数(CDAI)の 70 ポイント以上の低下と定義した.第 2 の試験では,最初の試験でナタリズマブに反応があった患者 339 例を,ナタリズマブ 300 mg またはプラセボのいずれかを 4 週ごとに 56 週目まで投与する群に,再び無作為に割付けた.主要転帰は,36 週目までの反応の持続とした.両試験の副次的転帰は,疾患の寛解(CDAI スコア 150 未満)とした.

結 果

第 1 試験では,10 週目の時点において,ナタリズマブ群とプラセボ群の奏効率(それぞれ 56%,49%,P=0.05)および寛解率(それぞれ 37%,30%,P=0.12)は同等であった.第 2 試験では,ナタリズマブ投与を継続した場合,プラセボ投与に変更した場合と比較して,36 週目までの反応(61% 対 28%,P<0.001)および寛解(44% 対 26%,P=0.003)の持続率が高かった.重大な有害事象が発生したのは,第 1 試験では各群で 7%,第 2 試験では,プラセボ群の 10%とナタリズマブ群の 8%であった.非盲検で行った延長試験では,ヒトポリオーマウイルスである JC ウイルスが引き起す進行性多巣性白質脳症により,ナタリズマブ群の患者 1 例が死亡した.

結 論

ナタリズマブを用いたクローン病の寛解導入療法では,奏効率と寛解率の改善が小さく,改善は有意ではなかった.反応があった患者では,ナタリズマブを 4 週ごとに継続投与した場合,反応および寛解の持続率が有意に上昇した.ナタリズマブの利益は,進行性多巣性白質脳症を含む重大な有害事象のリスクと比較して評価する必要があると考えられる.(ClinicalTrials.gov 識別番号:NCT00032786,NCT00032799)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2005; 353 : 1912 - 25. )