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September 1, 2005 Vol. 353 No. 9

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デングショック症候群における蘇生のための 3 種類の輸液の比較
Comparison of Three Fluid Solutions for Resuscitation in Dengue Shock Syndrome

B.A. Wills and Others

背景

デングショック症候群は,重篤な血液の漏出と止血機能障害を特徴とし,1~5%が死にいたる.輸液が決定的に重要な治療的介入とされているが,世界保健機関の治療ガイドラインは依然として経験的なものであり,エビデンスに基づいたものではない.

方 法

デングショック症候群のベトナム人小児において,初期蘇生に用いる 3 種の輸液を二重盲検無作為試験で比較した.中等度のショック状態の小児 383 例を,乳酸リンゲル液,6%デキストラン 70(コロイド),6%ヒドロキシエチルデンプン(コロイド)のいずれかに,また,重度のショック状態の小児 129 例を,上記コロイド液のいずれかに無作為に割付けた.主要転帰指標は,試験輸液投与後の救命用コロイド液の必要性とした.

結 果

死亡したのは 1 例のみであった(死亡率 0.2%未満).主要転帰指標である救命用コロイドの必要性は,2 つの重症度群の各輸液間で同程度であった.救命用コロイドの必要性の相対リスクは,中等度のショック状態の小児において,乳酸リンゲル液の投与を受けた場合,いずれかのコロイド液の投与を受けた場合と比較して 1.08 であり(95%信頼区間 0.78~1.47,P=0.65),重度のショック状態の小児において,デキストランの投与を受けた場合,デンプンの投与を受けた場合と比較して 1.13 であった(95%信頼区間 0.74~1.74,P=0.59).また,複合解析において,デキストランの投与を受けた小児では,デンプンの投与を受けた小児と比較して 0.88 であった(95%信頼区間 0.66~1.17,P=0.38).乳酸リンゲル液による治療では,いずれかのコロイド液による治療と比較して,ヘマトクリット値の回復が遅く,初期蘇生までの時間がわずかに長かったが,治療に対する反応性のその他の評価項目に差はみられなかった.2 種類のコロイド液の有効性にはごくわずかな差しかみられなかったが,デンプン投与群よりもデキストラン投与群のほうが有害反応の発生率が有意に高かった.出血症状,血液凝固障害,過剰補液の重症度は,いずれの輸液療法群でも同程度であった.

結 論

中等度のデングショック症候群の小児では,乳酸リンゲル液による初期蘇生が適応となる.重度のショック状態の小児では,デキストラン 70 と 6%ヒドロキシエチルデンプンの効果は同程度であるが,デキストラン投与に関連する有害反応を考慮すると,これらの小児ではデンプンのほうが好ましいと考えられる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2005; 353 : 877 - 89. )