非肥満者,肥満者,糖尿病患者におけるレチノール結合蛋白 4 とインスリン抵抗性
Retinol-Binding Protein 4 and Insulin Resistance in Lean, Obese, and Diabetic Subjects
T.E. Graham and Others
インスリン抵抗性は 2 型糖尿病の一因である.レチノール結合蛋白 4(RBP4)は脂肪細胞から分泌される蛋白であるが,インスリン抵抗性状態ではその血清濃度が上昇する.マウスの実験では,RBP4 値の上昇がインスリン抵抗性を引き起すことが示唆されている.われわれは,血清 RBP4 値がインスリン抵抗性と相関するかどうか,また,インスリン感受性を改善する介入を行ったあとにその値が変化するかどうかを調べた.さらに,血清 RBP4 値の上昇が,インスリン抵抗性の早期の病理学的特徴である,脂肪細胞中のグルコーストランスポーター 4(GLUT4)の発現低下と関連するかどうかを検討した.
3 群の被験者において,血清 RBP4 値,インスリン抵抗性,メタボリックシンドロームの要素を測定した.1 つの群では,運動トレーニング後に測定を繰り返した.単離した脂肪細胞中の GLUT4 蛋白を測定した.
肥満で,耐糖能異常あるいは 2 型糖尿病の被験者と,2 型糖尿病の強い家族歴があり,肥満や糖尿病でない被験者において,血清 RBP4 値とインスリン抵抗性の程度は相関した.血清 RBP4 値の上昇は,体格指数,ウエスト・ヒップ比,血清トリグリセリド値,収縮期血圧の上昇,および HDL コレステロール値の低下など,メタボリックシンドロームの要素に関連した.運動トレーニングは,インスリン抵抗性が改善した被験者でのみ血清 RBP4 値の低下に関連した.脂肪細胞の GLUT4 蛋白と血清 RBP4 値は逆相関を示した.
RBP4 は,脂肪細胞から分泌され,明らかな糖尿病の発症前に血清濃度が上昇する分子であり,さまざまな臨床像を示す患者において,インスリン抵抗性や関連する心血管危険因子を特定するものと考えられる.これらの知見は,血清 RBP4 値の低下を目的とした抗糖尿病治療の理論的根拠となる.