中国におけるヨウ素摂取の甲状腺疾患に対する影響
Effect of Iodine Intake on Thyroid Diseases in China
W. Teng and Others
ヨウ素は甲状腺ホルモンの必須成分で,摂取量が少ない場合も多い場合も甲状腺疾患を引き起す可能性がある.ヨウ素摂取量が増加している中国で,ヨウ素摂取量が軽度欠乏(尿中ヨウ素排泄量の中央値 84 μg/L),適量以上(中央値 243 μg/L),過剰(中央値 651 μg/L)と異なる 3 地域のコホートにおいて,顕性甲状腺機能低下症,不顕性甲状腺機能低下症,自己免疫性甲状腺炎の有病率の増加を観察した.1999 年のベースライン試験に登録され,2004 年までの 5 年間の追跡期間中に登録されていた被験者を対象に,ヨウ素摂取量の地域差が甲状腺疾患の発生率に及ぼす影響を調べた.
ベースライン時に登録した任意抽出の被験者 3,761 例のうち,3,018 例(80.2%)がこの追跡研究に参加した.ベースライン時と追跡時に,血清中の甲状腺ホルモンと甲状腺自己抗体の濃度,尿中ヨウ素を測定し,甲状腺の B モード超音波検査を行った.
ヨウ素摂取量が軽度欠乏,適量以上,過剰の被験者で,累積発生率はそれぞれ,顕性甲状腺機能低下症が 0.2%,0.5%,0.3%,不顕性甲状腺機能低下症が 0.2 %,2.6%,2.9%,自己免疫性甲状腺炎が 0.2%,1.0%,1.3%であった.ベースライン時に甲状腺機能が正常で抗甲状腺抗体を有していた被験者において,血清甲状腺刺激ホルモン濃度上昇の 5 年発生率は,ヨウ素摂取が適量以上または過剰な被験者のほうが,ヨウ素摂取が軽度欠乏の被験者よりも高かった.ベースライン時の血清甲状腺刺激ホルモン濃度が 1.0~1.9 mIU/L の被験者では,その後の甲状腺機能異常の発生率がもっとも低かった.
適量以上または過剰なヨウ素摂取は,甲状腺機能低下症や自己免疫性甲状腺炎を引き起す可能性がある.