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July 20, 2006 Vol. 355 No. 3

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地域ベースの研究における駆出率が保持されている心不全の転帰
Outcome of Heart Failure with Preserved Ejection Fraction in a Population-Based Study

R.S. Bhatia and Others

背景

駆出率が保持されている心不全の重大さが,次第に認識されるようになってきた.駆出率が保持されている心不全患者の疫学的特徴と転帰を検討し,その所見について,駆出率が低下している心不全患者と比較した.

方 法

1999 年 4 月 1 日~2001 年 3 月 31 日のあいだに,カナダ・オンタリオ州の 103 ヵ所の病院に入院し,退院時の診断が心不全で,駆出率が測定されていた患者 2,802 例を調査した.患者を,駆出率が 40%未満(駆出率が低下している心不全),駆出率が 40~50%(駆出率が境界域にある心不全),駆出率が 50%超(駆出率が保持されている心不全)の 3 群に分類した.駆出率が 40%未満の群と 50%超の群を詳細に検討した.主要転帰評価項目は,1 年以内の死亡および心不全による再入院とした.

結 果

31%の患者で駆出率が 50%を超えていた.駆出率が保持されている心不全患者は,高齢者や女性であることが多く,高血圧と心房細動の既往歴を有する傾向がみられた.症状の現病歴と臨床検査所見は 2 群間で同等であった.未調整の死亡率は,駆出率が 50%を超える群と 40%未満の群とのあいだに,30 日後(5% 対 7%,P=0.08)および 1 年後の時点(22% 対 26%,P=0.07)で有意差はみられなかった.調整した 1 年後の死亡率にも 2 群間で有意差はみられなかった(ハザード比 1.13,95%信頼区間 0.94~1.36,P=0.18).心不全による再入院率および入院中の合併症の発生率に,2 群間で差はみられなかった.

結 論

新たに心不全を発症した患者のうち,かなりの割合の患者で駆出率が 50%を超えていた.駆出率が保持されている心不全患者の生存率は,駆出率が低下している患者と同等であった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 260 - 9. )