過去に保険に加入していなかったメディケア受給者による医療サービスの利用
Use of Health Services by Previously Uninsured Medicare Beneficiaries
J.M. McWilliams and Others
65 歳時にメディケアプログラムに登録されるまで保険に加入していなかった成人は,それまで保険に加入していたと想定した場合よりも,罹患率が高くなり,その後より集中的で費用のかかる治療が必要となることがある.
全米の代表的な健康・退職調査(Health and Retirement Study)からの経時的データを利用し,65 歳時にメディケア適用が開始される以前に私的保険に加入していた成人と加入していなかった成人 5,158 例について,自己報告による 1992~2004 年の医療サービスの利用および医療費を評価した.傾向スコア法を用いて,59~60 歳時点の特徴が多く類似した,過去に保険に加入していた受給者と加入していなかった受給者における医療サービスの利用と医療費を比較した.65 歳以降のメディケア補足保険ならびに医薬品の適用範囲の差を補正した.
65 歳前に高血圧,糖尿病,心疾患,脳卒中と診断された成人 2,951 例中,65 歳時にメディケア適用を受け,過去に保険に加入していなかった成人では,過去に保険に加入していた成人と比較して,受診回数(P<0.001),入院回数(P=0.001),総医療費(P=0.02)が有意に増加した.これらの病態のない成人 2,207 例では,有意差を示す増加は認められなかった(すべての比較について P>0.12).メディケア補足保険ならびに医薬品の適用範囲で補正した解析では,これらの病態を有する保険未加入成人のほうが,加入成人よりも,65~72 歳までの受診回数(相対差 13%,P=0.04),入院回数(相対差 20%,P=0.04),総医療費(相対差 51%,P=0.09)が多かった.
65 歳前に保険に加入していない成人に対する医療保険の適用範囲拡大にかかる費用は,とくにその人たちが 65 歳前に心血管疾患や糖尿病に罹患している場合に,65 歳以降における医療サービス利用や医療費が減少することで部分的に相殺される可能性がある.