心エコースクリーニングで発見されるリウマチ性心疾患の有病率
Prevalence of Rheumatic Heart Disease Detected by Echocardiographic Screening
E. Marijon and Others
リウマチ性心疾患の有病率に関する疫学研究では,疑われる症例に対して心エコーによる確認を行うという臨床的スクリーニングが用いられている.われわれは,調査した小児全例に心エコーによるスクリーニングを行うことで,リウマチ性心疾患の有病率が顕著に高くなるという仮説を立てた.
カンボジアとモザンビークにおいて無作為に選んだ 6~17 歳の学童を対象に,標準的な臨床的判定基準と心エコーによる判定基準に従ってリウマチ性心疾患のスクリーニングを行った.
診察により,リウマチ性心疾患はカンボジアの小児 3,677 人中 8 例,モザンビークの小児 2,170 人中 5 例で発見され,心エコーで確認された.すなわち,有病率および 95%信頼区間(CI)は,カンボジアで 1,000 人中 2.2 例(95% CI 0.7~3.7),モザンビークで 1,000 人中 2.3 例(95% CI 0.3~4.3)であった.これに対して,心エコースクリーニングで発見されたリウマチ性心疾患は,カンボジアで 79 例,モザンビークで 66 例であり,有病率にするとそれぞれ 1,000 人中 21.5 例(95% CI 16.8~26.2),1,000 人中 30.4 例(95% CI 23.2~37.6)であった.症例の大多数で僧帽弁病変が認められた(カンボジアで 87.3%,モザンビークで 98.4%).
心エコーを用いた系統的スクリーニングにより,リウマチ性心疾患の有病率が,臨床的スクリーニングと比較してはるかに高くなった(約 10 倍).リウマチ性心疾患は重篤な病態を招くことが多く,また早期の症例が正確に確認されれば二次予防が有効である可能性があることから,これらの結果は公衆衛生学的に重要な意味をもっている.