重症の血友病男児における関節疾患の予防的治療と発症時治療の比較
Prophylaxis versus Episodic Treatment to Prevent Joint Disease in Boys with Severe Hemophilia
M.J. Manco-Johnson and Others
重症の血友病において,関節症の予防に有効な方法は明らかにされていない.
重症の血友病 A の男児を,組換え型第 VIII 因子の定期的な注入(予防的治療)と,関節内出血時に第 VIII 因子の投与を 3 回以上,最低でも計 80 IU/kg 体重投与する一時的強化注入スケジュールのいずれかに無作為に割り付けた.主要転帰は,指標関節(足関節,膝,肘)において,X 線撮影または磁気共鳴画像法(MRI)で検出される骨または軟骨の損傷の発生率とした.
月齢 30 ヵ月未満の男児 65 例を,予防的治療(32 例)と発症時の強化治療(33 例)に無作為に割り付けた.男児が 6 歳に達したとき,指標関節の構造が MRI 上正常であるとみなされたのは,予防的治療群で 93%,発症時治療群で 55%であった(P=0.006).MRI で検出された発症時治療による関節の損傷の相対リスクは,予防的治療と比較して 6.1 であった(95%信頼区間 1.5~24.4).試験終了時の関節内および全身の出血回数の年間平均は,発症時治療群のほうが予防的治療群より高かった(両比較について P<0.001).予防的治療を受けた男児 2 例で第 VIII 因子インヒビターの高い抗体価が認められ,発症時治療群の 3 例で生命にかかわる出血があった.中心静脈カテーテル留置に関連する入院と感染について,両群間で有意差はみられなかった.
組換え型第 VIII 因子を用いた予防的治療により,重症の血友病 A の男児における関節の損傷を予防し,関節内およびその他の部位で起こる出血の頻度を減少させることができる.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00207597)