August 30, 2007 Vol. 357 No. 9
外傷性脳損傷患者の輸液蘇生における生理食塩水とアルブミンの比較
Saline or Albumin for Fluid Resuscitation in Patients with Traumatic Brain Injury
The SAFE Study Investigators
生理食塩水 対 アルブミン輸液評価(Saline versus Albumin Fluid Evaluation;SAFE)研究において,外傷性脳損傷患者の死亡率は,アルブミンで蘇生した患者のほうが,生理食塩水で蘇生した患者と比べて高いことが示唆された.この研究に登録された外傷性脳損傷患者の事後的追跡研究を行った.
外傷性脳損傷患者(外傷の既往がある患者,CT スキャンで頭部外傷の所見が認められる患者,グラスゴー昏睡尺度 [Glasgow Coma Scale;GCS] スコアが 13 以下の患者)について,ベースラインの特性を症例報告書,臨床記録,CT スキャンから抽出して記録し,無作為化 24 ヵ月後に生存状況および身体機能の神経学的転帰を判定した.
460 例の患者を追跡した.そのうち 231 例(50.2%)がアルブミンの投与を受け,229 例(49.8%)が生理食塩水の投与を受けた.GCS スコア 3~8 の患者のサブグループを重度脳損傷患者として分類した(アルブミン群では 160 例 [69.3%],生理食塩水群では 158 例 [69.0%]).人口統計学的特性と脳損傷の重症度の指標は,ベースラインにおいて同程度であった.24 ヵ月の時点で,アルブミン群 214 例中 71 例(33.2%)が死亡したのに対し,生理食塩水群では 206 例中 42 例(20.4%)が死亡した(相対リスク 1.63,95%信頼区間 [CI] 1.17~2.26,P=0.003).重度脳損傷患者では,アルブミン群 146 例中 61 例(41.8%)が死亡したのに対し,生理食塩水群では 144 例中 32 例(22.2%)が死亡した(相対リスク 1.88,95% CI 1.31~2.70,P<0.001).GCS スコア 9~12 の患者では,アルブミン群 50 例中 8 例(16.0%)が死亡し,生理食塩水群 37 例中 8 例(21.6%)が死亡した(相対リスク 0.74,95% CI 0.31~1.79,P=0.50).
危篤状態の外傷性脳損傷患者に関するこの事後研究では,死亡率は,アルブミンによる輸液蘇生のほうが,生理食塩水による蘇生と比べて高かった.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN76588266)