March 27, 2008 Vol. 358 No. 13
人工換気を受けているヒトにおける横隔膜線維の急速な廃用性萎縮
Rapid Disuse Atrophy of Diaphragm Fibers in Mechanically Ventilated Humans
S. Levine and Others
動物では,横隔膜の完全な運動停止と人工換気(18 時間以上)が組み合わさることにより,筋線維の廃用性萎縮が誘発される.われわれは,ヒトの横隔膜にも同じことが起こりうるという仮説を立てた.
脳死状態の臓器提供者 14 例(症例被験者)の横隔膜肋骨部から,臓器摘出前に生検標本を採取し,良性の病変または限局性肺癌の手術を受けた患者 8 例(対照被験者)の横隔膜から術中に採取した生検標本と比較した.症例被験者では 18~69 時間にわたり横隔膜の運動が停止し,人工換気が行われていたが,対照被験者における横隔膜の運動停止と人工換気は 2~3 時間であった.これらの標本について,組織検査,生化学検査,遺伝子発現検査を実施した.
対照群の横隔膜の生検標本と比較して,症例被験者の標本では,横断面積の減少が遅筋線維で 57%(P=0.001),速筋線維で 53%(P=0.01)みられ,グルタチオン濃度の減少(23%,P=0.01),活性型カスパーゼ-3 の発現の増加(100%,P=0.05),MBD4(ハウスキーピング遺伝子)に対する atrogin-1 メッセンジャー RNA(mRNA)転写産物の比率の上昇(200%,P=0.002),MBD4 に対する MuRF-1 mRNA 転写産物の比率の上昇(590%,P=0.001)が認められた.
18~69 時間にわたる横隔膜の完全な運動停止と人工換気が組み合わさることにより,ヒトの横隔膜筋線維には顕著な萎縮が生じる.これらの研究結果は,横隔膜の運動停止時における蛋白質分解の増加と一致する.