骨密度と骨折に関与する複数の遺伝子座
Multiple Genetic Loci for Bone Mineral Density and Fractures
U. Styrkarsdottir and Others
骨密度は,後年の骨粗鬆症リスクに影響し,骨折リスクの評価に有用である.われわれは,骨密度と骨折に関連する配列変異の同定を試みた.
アイスランド人被験者 5,861 例(発見セット)のデータの量的形質解析を行い,301,019 個の一塩基多型(SNP)と,大腿骨頸部や腰椎の骨密度との関連を検討した.その後,アイスランド人 4,165 例,デンマーク人 2,269 例,オーストラリア人 1,491 例の追試セットにおいて,32 の遺伝子座の 74 個の SNP にみられる関連を検証した(74 個のほとんどが,発見セットで関連が示唆された).
5 つのゲノム領域における配列変異は,発見セットにおいて骨密度と有意な関連を示し,その関連は追試セットで確認された(すべてのセットを合わせた P 値,1.2×10-7~2.0×10-21).3 つの領域は,これまでに骨の生物学的特性に重要であることが示された遺伝子;破骨細胞分化因子(receptor activator of nuclear factor-κB ligand;RANKL)(染色体 13q14),オステオプロテジェリン遺伝子(OPG)(8q24),エストロゲン受容体 1 遺伝子(ESR1)(6q25)の,近傍あるいは内部に存在していた.ほかの 2 つの領域は,ジンクフィンガー/BTB ドメイン含有 40 遺伝子(ZBTB40)(1p36)と,主要組織適合性複合体領域(6p21)の近傍にあった.1p36,8q24,6p21 の遺伝子座は骨粗鬆症性骨折とも有意な関連を示し,receptor activator of nuclear factor-κB 遺伝子(RANK)近傍の 18q21 や,2p16,11p11 の遺伝子座でもその関連は認められた.
3 つのヨーロッパ系の集団において,骨密度および軽度外傷性骨折と一貫して関連を示す共通の配列変異を発見した.これらの変異は,単独では個人のリスクを予測するうえで臨床的に有用ではないが,骨粗鬆症の背景にある生化学的経路に関する洞察を与えるものである.
本論文(10.1056/NEJMoa0801197)は,2008 年 4 月 29 日に www.nejm.org で発表された.