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January 3, 2008 Vol. 358 No. 1

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血小板活性化因子,PAF アセチルヒドロラーゼ,および重症アナフィラキシー
Platelet-Activating Factor, PAF Acetylhydrolase, and Severe Anaphylaxis

P. Vadas and Others

背景

血小板活性化因子(PAF)は,動物のアナフィラキシーにおける重要なメディエータであり,PAF を阻害する介入により致死的なアナフィラキシーを予防することができる.ヒトのアナフィラキシーにおける PAF および PAF を不活性化する酵素 PAF アセチルヒドロラーゼの役割はまだ報告されていない.

方 法

アナフィラキシー患者 41 例と対照被験者 23 例について,血清中の PAF 濃度と PAF アセチルヒドロラーゼ活性を測定した.血清中 PAF アセチルヒドロラーゼ活性は,致死的アナフィラキシーを発現したピーナッツアレルギー患者 9 例でも測定し,アレルギーのない対照小児 26 例,アレルギーのない対照成人 49 例,軽度ピーナッツアレルギーのある小児 63 例,非致死的アナフィラキシー患者 24 例,アナフィラキシー以外の原因で死亡した小児 10 例,生命にかかわる喘息を有する小児 15 例,生命にかかわらない喘息を有する小児 19 例の値と比較した.

結 果

平均(±SD)血清中 PAF 濃度は,アナフィラキシー患者(805±595 pg/mL)のほうが対照群の患者(127±104 pg/mL)よりも有意に高く(対数変換後 P<0.001),アナフィラキシーの重症度と相関がみられた.PAF 濃度が高い被験者の割合は,対照群の 4%から,グレード 1 のアナフィラキシー群の 20%,グレード 2 のアナフィラキシー群の 71%,グレード 3 のアナフィラキシー群の 100%と,重症度と共に増加した(P<0.001).PAF 濃度と PAF アセチルヒドロラーゼ活性には逆相関がみられた(P<0.001).PAF アセチルヒドロラーゼ値が低い被験者の割合は,アナフィラキシーの重症度が増すと共に増加した(すべての比較について P<0.001).血清中 PAF アセチルヒドロラーゼ活性は,ピーナッツによる致死的アナフィラキシー患者のほうが,対照被験者よりも有意に低かった(すべての比較について P<0.001).

結 論

アナフィラキシーの重症度に対して,血清中 PAF 濃度は正相関を示し,血清中アセチルヒドロラーゼ活性は逆相関を示した.PAF アセチルヒドロラーゼ活性は,ピーナッツに致死的アナフィラキシー反応を示した患者で,いずれの対照群被験者と比べても有意に低かった.PAF アセチルヒドロラーゼにより PAF が不活性化されないことが,アナフィラキシーの重症度に関与すると考えられる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 28 - 35. )