腎移植時の脱感作療法としてのリツキシマブおよび免疫グロブリン静脈内投与
Rituximab and Intravenous Immune Globulin for Desensitization during Renal Transplantation
A.A. Vo and Others
HLA に高い感作を示す患者への移植に関する選択肢は,現在ほとんど存在しない.この探索的単一施設非盲検第 1~2 相試験では,免疫グロブリン静脈内投与+リツキシマブ(rituximab)投与が,抗 HLA 抗体レベルを低下させ,移植率を改善するかどうかを検証した.
2005 年 9 月~2007 年 5 月に,高感作患者計 20 例(補体依存性細胞障害活性アッセイによる平均 [±SD] パネル反応性 T 細胞抗体レベルが 77±19%またはドナー特異的抗体を有する患者)を登録し,免疫グロブリン静脈内投与+リツキシマブ投与を行った.移植率,パネル反応性抗体レベル,移植時の交差適合試験結果,患者および移植腎の生存率,急性拒絶反応,血清クレアチニン値,有害事象・重篤な有害事象,免疫学的因子を記録した.
2 回目の免疫グロブリン静脈内投与後の平均パネル反応性抗体レベルは 44±30%であった(治療前レベルとの比較について P<0.001).登録時には,心停止ドナーから移植を受けたレシピエントの移植までの平均透析期間は 144±89 ヵ月(60~324 ヵ月)であったが,脱感作後の移植までの期間は 5±6 ヵ月(2~18 ヵ月)であった.20 例中 16 例(80%)が移植を受けた.12 ヵ月の時点で,平均血清クレアチニン値は 1.5±1.1 mg/dL(133±97 μmol/L),患者および移植腎の平均生存率は,それぞれ 100%,94%であった.試験中,投与に関連した有害事象および重篤な有害事象は認められなかった.感染性合併症および神経学的症状に対する長期のモニタリングでは,予期せぬ事象はみられなかった.
これらの所見から,免疫グロブリン静脈内投与とリツキシマブ投与の併用が,生体ドナー・心停止ドナーからの移植を待つ患者に対する脱感作レジメンとして有効である可能性が示唆される.このアプローチの臨床上の有効性および安全性を評価するには,より大規模かつ長期の試験が必要である.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00642655)