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July 31, 2008 Vol. 359 No. 5

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喫煙禁止法と急性冠症候群による入院
Smoke-free Legislation and Hospitalizations for Acute Coronary Syndrome

J.P. Pell and Others

背景

これまでの研究により,公共の場での喫煙を禁止する法律の制定後に,急性冠症候群による全入院数が減少していることが示されている.しかし,入院の減少がみられるのが,非喫煙者,喫煙者,あるいはその両者なのかどうかについては明らかでない.

方 法

2006 年 3 月末以降,スコットランド全土では,公共の閉鎖空間における喫煙が法律によって禁止されている.われわれは,この法律の通過前の 10 ヵ月間および翌年の同一期間にスコットランドの 9 病院に急性冠症候群で入院した全患者を対象に,質問票ならびに生化学所見をもとに受動喫煙への曝露および喫煙状態に関する情報を前向きに収集した.これらの病院だけで,スコットランド(人口 510 万人)における急性冠症候群による入院数の 64%を占めていた.

結 果

全体で,急性冠症候群による入院数は 3,235 例から 2,684 例へ減少した.すなわち 17%減少したことになるが(95%信頼区間 16~18),同一期間での(このような法律のない)イングランドにおける減少は 4%であり,研究前 10 年間におけるスコットランドでの年間平均減少率は 3%(最大の減少は 9%)であった.入院数の減少は,病院へ入院しなかった急性冠症候群患者の死亡数の増加に起因するものではなく,死亡数は 6%減少していた.急性冠症候群による入院数は,喫煙者では 14%,過去喫煙者では 19%,非喫煙者では 21%減少していた.非喫煙者は,1 週間あたりの受動喫煙への曝露時間が減少したことを報告した(傾向に対するχ2 検定で P<0.001).この減少は,血清コチニン濃度の幾何平均値が,0.68 ng/mL から 0.56 ng/mL へ低下していたことから確認された(t 検定で P<0.001).

結 論

急性冠症候群による入院数は,喫煙禁止法の制定後に減少した.この減少のうち,67%には非喫煙者が関与していた.しかし,喫煙者の入院数が減ったことも全体的な減少に寄与していた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 359 : 482 - 91. )