January 14, 2010 Vol. 362 No. 2
米兵の派遣とその妻の精神科受診
Deployment and the Use of Mental Health Services among U.S. Army Wives
A.J. Mansfield and Others
イラクとアフガニスタンにおける軍事活動により,兵士の派遣が頻繁かつ長期にわたり行われている.兵士たちの多くは結婚しているが,兵士の派遣がその配偶者に及ぼす影響に関する研究はほとんど行われていない.
2003~06 年に外来で診療を受けた現役米陸軍兵の妻,250,626 例の電子カルテデータを検討した.同期間におけるイラク・クウェート地域での「イラクの自由作戦」とアフガニスタンでの「不朽の自由作戦」への夫の派遣について,妻の社会人口統計学的特性と精神疾患の既往,および派遣回数で補正後,派遣期間(月)別に精神疾患の診断を比較した.
夫の派遣と派遣期間の長さは,妻の精神疾患の診断と関連していた.補正後の解析では,派遣されなかった夫をもつ妻と比べて,1~11 ヵ月間派遣された夫をもつ妻は,以下の診断を受ける頻度が高かった;うつ病性障害(1,000 例あたりの超過数 27.4 例,95%信頼区間 [CI] 22.4~32.3),睡眠障害(1,000 例あたりの超過数 11.6 例,95% CI 8.3~14.8),不安障害(1,000 例あたりの超過数 15.7 例,95% CI 11.8~19.6),急性ストレス反応と適応障害(1,000 例あたりの超過数 12.0 例,95% CI 8.6~15.4).派遣期間が 11 ヵ月を超えた場合,1,000 例あたりの超過数は,うつ病性障害 39.3 例(95% CI 33.2~45.4),睡眠障害 23.5 例(95% CI 19.4~27.6),不安障害 18.7 例(95% CI 13.9~23.5),急性ストレス反応と適応障害 16.4 例(95% CI 12.2~20.6)であった.
米陸軍兵の派遣期間が長くなることは,妻の精神疾患の診断の増加と関連していた.この結果は,こうした精神疾患の予防と治療への取組みに意義をもつものと考えられる.