死亡前の事前指示書と代理人による意思決定の結果
Advance Directives and Outcomes of Surrogate Decision Making before Death
M.J. Silveira, S.Y.H. Kim, and K.M. Langa
最近の医療保険制度改革についての議論では,事前指示書(リビングウィル[延命治療に関する意思表明書],医療に関する永続的委任状)の重要性に関する問題が取り上げられている.
60 歳以上の成人を対象とした健康と退職に関する研究(Health and Retirement Study)において,2000~06 年に死亡した対象者の意思決定の代理人から得たデータを用い,意思決定を要した対象者の割合と,意思決定能力を喪失した対象者の割合を調査し,事前指示書に記されていた希望と代理人による意思決定の結果との関連を検証した.
対象者 3,746 人のうち,42.5%で意思決定を要した.意思決定を要した対象者のうち 70.3%が意思決定能力を喪失しており,そのうちの 67.6%が事前指示書を作成していた.リビングウィルを作成していた対象者では,可能なすべての治療(1.9%)に比べ,限定的ケア(92.7%),鎮痛ケア(96.2%)を望む傾向が高かった.限定的ケアを望んだ対象者の 83.2%と鎮痛ケアを望んだ対象者の 97.1%が,希望に添った治療を受けた.可能なすべての治療を望んだ対象者 10 例では,その治療を受けたのは 5 例のみであったが,可能なすべての治療を望んだ対象者は,望まなかった対象者に比べて積極的な治療を受ける傾向がはるかに高かった(補正オッズ比 22.62,95%信頼区間 [CI] 4.45~115.00).リビングウィルを作成した対象者は,作成しなかった対象者に比べて可能なすべての治療を受ける傾向が低かった(補正オッズ比 0.33,95% CI 0.19~0.56).医療に関する永続的委任状で代理人を指名していた対象者は,指名していなかった対象者に比べて,病院で死亡する傾向(補正オッズ比 0.72,95% CI 0.55~0.93)と,可能なすべての治療を受ける傾向(補正オッズ比 0.54,95% CI 0.34~0.86)が低かった.
2000~06 年に,多くの米国人高齢者が終末期近くに意思決定が必要となり,その時点で大半の人が意思決定能力を喪失していた.事前指示書を準備していた患者が受けた治療は,希望していた治療と強く関連していた.これらの結果は,事前指示書を引き続き使用することを支持している.