January 21, 2010 Vol. 362 No. 3
肺気腫率,気道閉塞と左室充満障害
Percent Emphysema, Airflow Obstruction, and Impaired Left Ventricular Filling
R.G. Barr and Others
きわめて重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)では,肺血管抵抗の上昇に伴い肺性心が生じ,二次的に左室充満,1 回拍出量,心拍出量が減少する.われわれは,きわめて重症の肺疾患以外でも,CT で検出された肺気腫と気道閉塞が,左室拡張末期容積,1 回拍出量,心拍出量に対して負の相関を示すと仮定した.
MRI を用いて,45~84 歳の患者 2,816 例の左室構造と左室機能を評価した.肺気腫の重症度(肺気腫率で示す)は,心臓 CT 画像上の肺野条件における,Hounsfield 単位 -910 未満のボクセルのパーセンテージと定義した.米国胸部疾患学会(ATS)のガイドラインに基づき,スパイロメトリーを実施した.一般化加法モデルを用いて,閾値効果を検討した.
被験者のうち,13%が現喫煙者,38%が元喫煙者,49%が非喫煙者であった.肺気腫率の 10%の上昇は,左室拡張末期容積(-4.1 mL,95%信頼区間 [CI] -3.3~-4.9,P<0.001),1 回拍出量(-2.7 mL,95% CI -2.2~-3.3,P<0.001),心拍出量(-0.19 L/分,95% CI -0.14~-0.23,P<0.001)の減少に直線的に関連がみられた.この関連は,元喫煙者や非喫煙者に比べて,現喫煙者で大きかった.気道閉塞の程度は,左室構造と左室機能にも同様に関連し,喫煙状況もこれらの関連に影響を及ぼした.肺気腫率と気道閉塞は,左室駆出率に関連はみられなかった.
住民ベースの研究において,重症の肺気腫が CT で確認されることと,気道閉塞の重症度が高いことは,左室充満障害,1 回拍出量減少,心拍出量減少と直線的に関連していたが,駆出率に変化はみられなかった.