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November 11, 2010 Vol. 363 No. 20

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冠動脈疾患に対するオメプラゾール併用または非併用下でのクロピドグレル投与
Clopidogrel with or without Omeprazole in Coronary Artery Disease

D.L. Bhatt and Others

背景

抗血栓療法において,消化器系の合併症は重要な問題である.プロトンポンプ阻害薬(PPI)はそのリスクを減少させると考えられているが,抗血小板薬 2 剤併用療法を受けている患者を対象とした無作為化試験はない.最近,PPI によってクロピドグレルの効果が減弱する可能性があることについて懸念が生じている.

方 法

抗血小板薬 2 剤併用療法が適応となる患者を,クロピドグレル+アスピリンに加え,オメプラゾール投与を受ける群と,プラセボ投与を受ける群に無作為に割り付けた.消化器系の主要評価項目は,明らかな出血または潜出血,症候性の胃十二指腸潰瘍またはびらん,閉塞,穿孔の複合とした.心血管系の主要評価項目は,心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,血行再建,脳卒中の複合とした.試験は,スポンサーが資金調達不能となり早期に中止された.

結 果

計画した登録者数は約 5,000 例で,3,873 例を無作為化し,3,761 例を解析した.全体で 51 例に消化管イベントが認められ,180 日の時点でのイベント発生率はオメプラゾール群 1.1%,プラセボ群 2.9%であった(オメプラゾールのハザード比 0.34,95%信頼区間 [CI] 0.18~0.63,P<0.001).明らかな上部消化管出血の発生率も,オメプラゾール群のほうがプラセボ群よりも低かった(ハザード比 0.13,95% CI 0.03~0.56,P=0.001).109 例に心血管イベントが認められ,発生率はオメプラゾール群 4.9%,プラセボ群 5.7%であった(オメプラゾールのハザード比 0.99,95% CI 0.68~1.44,P=0.96).高リスクのサブグループでの有意な不均一性は認められなかった.重篤な有害事象の発生率に 2 群間で有意差は認められなかったが,下痢のリスクはオメプラゾール群のほうが高かった.

結 論

アスピリンとクロピドグレルの投与を受けている患者に対して PPI を予防的に使用することにより,上部消化管出血の発生率は低下した.クロピドグレルとオメプラゾールのあいだに明らかな心血管系の相互作用はみられなかったが,今回の結果は,PPI の使用により,心血管イベントの発生率に臨床的に意味のある差が生じることを否定するものではない.(Cogentus Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00557921)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 1909 - 17. )