December 16, 2010 Vol. 363 No. 25
急性骨髄性白血病における DNMT3A の変異
DNMT3A Mutations in Acute Myeloid Leukemia
T.J. Ley and Others
急性骨髄性白血病(AML)患者の大部分で有害転帰の原因となっている遺伝子変化は明らかにされていない.
核型が正常な AML 患者 1 例の細胞のゲノムで超並列 DNA 塩基配列決定(massively parallel DNA sequencing)を行い,DNA メチルトランスフェラーゼをコードする DNMT3A の体細胞変異を同定した.共通する変異を明らかにするため,別の新規 AML 患者 280 例の DNMT3A のエクソンの配列を決定した.
281 例中 62 例(22.1%)で,翻訳に影響を及ぼすと予測される DNMT3A の変異が認められた.18 種類のミスセンス変異が同定され,そのうちもっとも多く認められたものはアミノ酸 R882 に影響を及ぼすと予測された(37 例).また,6 つのフレームシフト変異,6 つのナンセンス変異,3 つのスプライス部位変異と,DNMT3A が含まれる 1.5 Mbp の欠失も同定された.これらの変異は,中リスクの細胞遺伝学的プロファイルを有する患者群で高頻度に認められたが(166 例中 56 例,33.7%),低リスクの細胞遺伝学的プロファイルを有する 79 例全例で認められなかった(両比較について P<0.001).DNMT3A に変異を有する患者の全生存期間中央値は,有しない患者よりも有意に短かった(12.3 ヵ月 対 41.1 ヵ月,P<0.001).DNMT3A の変異は,中リスクの細胞遺伝学的プロファイルまたは FLT3 の変異を有する患者において,年齢とは無関係に有害転帰との関連が認められ,また,Cox 比例ハザード解析において転帰不良との独立した関連が認められた.
DNMT3A の変異は,中リスクの細胞遺伝学的プロファイルを有する新規 AML 患者で高頻度に共通して認められ,転帰不良と独立して関連している.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)