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August 26, 2010 Vol. 363 No. 9

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常染色体優性多発性嚢胞腎患者に対するエベロリムス
Everolimus in Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease

G. Walz and Others

背景

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は,緩徐に進行する遺伝性疾患であり,末期腎不全にいたる場合が多い.その基礎となる遺伝子変異が数年前に同定されたが,嚢胞の肥大の抑制や腎不全の予防に有効な治療法はまだ存在しない.実験的研究と観察研究では,哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)経路が,嚢胞の肥大に重要な役割を担っていることが示唆されている.

方 法

2 年間の二重盲検試験において,ADPKD 患者 433 例を,プラセボを投与する群と,mTOR 阻害薬であるエベロリムスを投与する群のいずれかに無作為に割り付けた.主要転帰は,12 ヵ月,24 ヵ月の時点で MRI により評価した総腎容積の変化とした.

結 果

ベースラインから 1 年後の総腎容積は,エベロリムス群で 102 mL,プラセボ群で 157 mL 増加し(P=0.02),2 年後にはそれぞれ 230 mL,301 mL 増加した(P=0.06).嚢胞容積は,1 年後にエベロリムス群では 76 mL,プラセボ群では 98 mL 増加し(P=0.27),2 年後にはそれぞれ 181 mL,215 mL 増加した(P=0.28).腎実質容積は,1 年後にエベロリムス群では 26 mL,プラセボ群では 62 mL 増加し(P=0.003),2 年後にはそれぞれ 56 mL,93 mL 増加した(P=0.11).24 ヵ月後の推定糸球体濾過量の平均減少量は,エベロリムス群では 8.9 mL/分/1.73 m2 体表面積であったのに対し,プラセボ群では 7.7 mL/分/1.73 m2 であった(P=0.15).薬剤特異的な有害事象の頻度は,エベロリムス群のほうが高かった.感染の発生率は両群で同程度であった.

結 論

2 年以下の試験期間では,エベロリムスにより,プラセボと比較して,ADPKD 患者の総腎容積の増加は抑制されたが,腎障害の進行は抑制されなかった.(Novartis 社から研究助成を受けた.EudraCT 番号:2006-001485-16;ClinicalTrials.gov 番号:NCT00414440)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 830 - 40. )