April 14, 2011 Vol. 364 No. 15
臨床肺移植における正常体温 ex vivo 肺灌流
Normothermic Ex Vivo Lung Perfusion in Clinical Lung Transplantation
M. Cypel and Others
ドナー肺の 80%以上は損傷している可能性があるため,移植に適さないとされる.正常体温 ex vivo 肺灌流(EVLP)を用いれば摘出ドナー肺を ex vivo 循環で灌流することができ,移植前に機能を再評価する機会が得られる.EVLP を行った高リスクドナー肺の移植の実施可能性を検討した.
前向き非無作為化臨床試験において,移植には高リスクとみなされた肺に EVLP を 4 時間行った.高リスクドナー肺は,肺水腫,動脈血酸素分圧と吸気酸素濃度の比(PO2:FiO2)300 mmHg 未満などの具体的な規準により定義した.機能的に許容できる肺はその後移植した.同期間中に EVLP を行わずに移植された肺を対照とした.主要エンドポイントは,移植後 72 時間の主要な移植肺機能不全とした.副次的エンドポイントは,30 日死亡率,気管支合併症,機械的人工換気の実施期間,集中治療室入室期間および入院期間とした.
試験期間中,肺 136 個が移植された.EVLP の施行基準を満たしたのはドナー 23 例の肺で,これらのうち 20 個は,EVLP 中の生理的機能は安定しており,PO2:FiO2 の中央値はドナーの体内で 335 mmHg であり,灌流 1 時間で 414 mmHg,4 時間で 443 mmHg に上昇した(P<0.001).これらの肺 20 個は移植され,残りの 116 個を対照群とした.移植後 72 時間の主要な移植肺機能不全の発生率は,EVLP 群 15%,対照群 30%であった(P=0.11).副次的エンドポイントについては有意差は認められず,EVLP に直接起因すると考えられる重度の有害事象は発生しなかった.
4 時間の EVLP 中に生理的に安定していた高リスクドナー肺の移植成績は,従来の方法で選択された肺の移植成績と同等であった.(Vitrolife 社より資金提供を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT01190059)