早期前立腺癌における根治的前立腺切除術と経過観察の比較
Radical Prostatectomy versus Watchful Waiting in Early Prostate Cancer
A. Bill-Axelson and Others
2008 年にわれわれは,前立腺癌による死亡率は根治的前立腺切除術により,経過観察と比べて低下することを報告した.その後 3 年間追跡し,15 年の推定結果を報告する.
1989 年 10 月~1999 年 2 月に,早期前立腺癌患者 695 例を,経過観察と根治的前立腺切除術のいずれかに無作為に割り付けた.追跡調査は,生検標本と根治的前立腺切除術標本の病理組織学的再検討と,盲検下での死因評価とし,2009 年 12 月までに終了した.Cox 比例ハザードモデルを用いて,相対リスク(95%信頼区間 [CI])を推定した.
中央値 12.8 年のあいだに,根治的前立腺切除術群の 347 例中 166 例と,経過観察群の 348 例中 201 例が死亡した(P=0.007).手術群の 55 例と経過観察群の 81 例の死因は前立腺癌であった.15 年の時点での前立腺癌による累積死亡率は手術群 14.6%,経過観察群 20.7%となり(6.1 パーセントポイントの差,95% CI 0.2~12.0),手術による相対リスクは 0.62(95% CI 0.44~0.87,P=0.01)であった.生存上の利益は,9 年間の追跡期間の前後で同等であり,低リスクの前立腺癌を有する患者でも認められたが,65 歳未満の患者に限られていた.死亡 1 例を回避するための治療必要数は,全体では 15 例,65 歳未満の患者では 7 例であった.根治的前立腺切除術群において,被膜外浸潤を認めた患者では,認めなかった患者と比較して,前立腺癌による死亡リスクが 7 倍であった(相対リスク 6.9,95% CI 2.6~18.4).
根治的前立腺切除術は,前立腺癌による死亡率の低下に関連していた.被膜外浸潤を認める患者には,局所療法や全身療法が有効である可能性がある.(スウェーデン対がん協会,国立衛生研究所から研究助成を受けた.)