The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 8, 2012 Vol. 366 No. 10

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

生命に関わる低ホスファターゼ症に対する酵素補充療法
Enzyme-Replacement Therapy in Life-Threatening Hypophosphatasia

M.P. Whyte and Others

背景

低ホスファターゼ症は,組織非特異型アルカリホスファターゼアイソザイム(TNSALP)の遺伝子の変異によって起こる.無機ピロリン酸が細胞外に蓄積し,くる病,骨軟化症にいたる.重症の乳児は,進行性の胸郭変形とそれに起因した呼吸不全によって死亡する場合や,骨疾患が持続する場合が多い.承認されている内科的治療はない.ENB-0040 は,骨を標的とする遺伝子組換えヒト TNSALP であり,Tnsalp ノックアウトマウスにおいて低ホスファターゼ症の症状発現を阻止する.

方 法

生命に関わるかまたは衰弱性の周産期型または乳児型の低ホスファターゼ症を有する乳幼児を,ENB-0040 を投与する多国間非盲検試験に登録した.主要目的は,くる病の治癒とし,X 線所見で評価した.運動と認知の発達,呼吸機能,安全性,ならびに ENB-0040 の薬物動態と薬力学を評価した.

結 果

募集した 11 例のうち,10 例が 6 ヵ月の治療を完了し,9 例が 1 年の治療を完了した.6 ヵ月時点で 9 例にみられたくる病の治癒には,発達の指標と肺機能の改善が伴っていた.高値を示していた TNSALP の基質である無機ピロリン酸とピリドキサール 5’-リン酸の血漿中濃度には低下がみられた.骨格の治癒には血清副甲状腺ホルモンの上昇が伴っており,食事性カルシウムの補充が必要となる場合が多かった.低カルシウム血症,異所性石灰化,明らかに薬剤に関連した重篤な有害事象を示す所見は認められなかった.4 例では抗 ENB-0040 抗体が低抗体価で出現したが,投与 48 週の時点で明確な臨床的,生化学的な異常や,自己免疫異常は認められなかった.

結 論

酵素補充療法剤である ENB-0040 は,生命に関わる低ホスファターゼ症の乳幼児における骨格の X 線所見の改善と,肺機能および身体機能の改善に関連していた.(Enobia Pharma 社,Shriners 小児病院から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00744042)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 904 - 13. )