September 13, 2012 Vol. 367 No. 11
入れ墨のインクに関連した Mycobacterium chelonae 感染症の集団発生
Outbreak of Mycobacterium chelonae Infection Associated with Tattoo Ink
B.S. Kennedy and Others
2012 年 1 月,皮膚科医からの一報を受けて,われわれはニューヨーク州ロチェスターにおける,入れ墨に関連した Mycobacterium chelonae 皮膚・軟部組織感染症の集団発生について調査を開始した.主な目的は,集団感染の広がり,原因,伝播形態を同定し,さらなる感染を防ぐことであった.
患者の構造化面接,皮膚生検検体の病理組織学的検査,抗酸菌塗抹検査,微生物培養・抗菌薬感受性試験によって得られたデータを解析した.また,DNA 塩基配列決定,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE),インクおよびインクの調合・包装に用いられた原料の培養,入れ墨店で使用されている水と蛇口の評価,インク製造業者の調査も行った.
2011 年 10 月~12 月に,混合済みの灰色インクを使用する同一の入れ墨師によって入れ墨を施された 19 人(男性 13 人,女性 6 人)において,施術後 3 週間以内に入れ墨部位に持続性の隆起した紅斑性皮疹が出現した.入れ墨の施術と皮疹の出現は,11 月にもっとも多かった(それぞれ 15 例,12 例).患者の平均年齢は 35(18~48)歳であった.17 例から得た皮膚生検検体では,全例に異常が認められ,M. chelonae が 14 例から分離され,DNA 塩基配列決定によって確認された.PFGE 解析では,臨床分離株 11 株と,混合済みインクの未開封瓶 3 本中 1 本において,識別不能なパターンが認められた.19 例のうち,18 例が適切な抗菌薬投与を受け,状態が改善した.
混合済みのインクが,今回の集団発生における共通感染源であった.これらの結果を受け,製造業者は回収を行った.