November 29, 2012 Vol. 367 No. 22
急性冠症候群発症後間もない患者におけるダルセトラピブの効果
Effects of Dalcetrapib in Patients with a Recent Acute Coronary Syndrome
G.G. Schwartz and Others
観察研究の解析によると,高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値が高いほど,冠動脈疾患イベントリスクの低下に関連することが示されている.しかし,治療によって HDL コレステロール値を上昇させることで,心血管リスクが低下するかどうかは明らかにされていない.コレステリルエステル転送蛋白(CETP)の阻害により HDL コレステロール値が上昇するため,心血管転帰が改善される可能性がある.
急性冠症候群発症後間もない患者 15,871 例を,エビデンスに基づく最善のケアに加えて,CETP 阻害薬ダルセトラピブ(dalcetrapib)600 mg/日を投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要有効性エンドポイントは,冠動脈疾患による死亡,非致死的心筋梗塞,脳梗塞,不安定狭心症,心停止後の蘇生の複合とした.
無作為化の時点で,平均 HDL コレステロール値は 42 mg/dL(1.1 mmol/L),平均低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値は 76 mg/dL(2.0 mmol/L)であった.試験期間中に,HDL コレステロール値はベースラインから,プラセボ群では 4~11%上昇し,ダルセトラピブ群では 31~40%上昇した.ダルセトラピブの LDL コレステロール値に対する作用はわずかであった.追跡期間の中央値は 31 ヵ月であった.主要エンドポイントイベント 1,135 件(計画された総数の 71%)を対象とした,事前に規定された中間解析の時点で,独立データ・安全性モニタリング委員会は,無益性のため試験の中止を勧告した.プラセボと比較して,ダルセトラピブによって主要エンドポイントのリスクは変化せず(累積イベント発生率はそれぞれ 8.0%と 8.3%,ダルセトラピブ群のハザード比 1.04,95%信頼区間 0.93~1.16,P=0.52),主要エンドポイントのいずれの項目にも,全死亡にも有意な効果は認められなかった.ダルセトラピブ群では,プラセボ群と比較して C 反応性蛋白値の中央値が 0.2 mg/L 高く,平均収縮期血圧が 0.6 mmHg 高かった(両比較において P<0.001).
急性冠症候群発症後間もない患者において,ダルセトラピブによって HDL コレステロール値は上昇したが,心血管イベントの再発リスクは低下しなかった.(F. Hoffmann-La Roche 社から研究助成を受けた.dal-OUTCOMES ClinicalTrials.gov 番号:NCT00658515)