January 10, 2013 Vol. 368 No. 2
アルツハイマー病のリスクに関連する TREM2 の変異
Variant of TREM2 Associated with the Risk of Alzheimer's Disease
T. Jonsson and Others
アポリポ蛋白 E の ε4 アレルなどの配列変異は,頻度の高い晩発性アルツハイマー病のリスクとの関連が示されている.晩発性アルツハイマー病のリスクに影響を及ぼすまれな変異は,ほとんど見つかっていない.
アイスランド人 2,261 例のゲノム配列を入手し,蛋白機能に影響を及ぼす可能性の高い配列変異を同定した.これらの変異をアルツハイマー病患者と対照のゲノムに外挿し,アルツハイマー病との関連を検討した.米国,ノルウェー,オランダ,ドイツの症例対照シリーズを用いて,再現研究を行った.アルツハイマー病に罹患していない高齢者集団における認知機能との遺伝的関連も検討した.
アイスランドでは,骨髄細胞に発現するトリガー受容体 2 をコードする遺伝子(TREM2)のまれなミスセンス変異(rs75932628-T)が,R47H 置換を引き起こすと予測され,アルツハイマー病の有意なリスクをもたらすことが明らかになった(オッズ比 2.92,95%信頼区間 [CI] 2.09~4.09,P=3.42×10-10).85 歳以上の対照では,この変異の頻度は 0.46%であった.この関連は,再現コホートにおいても認められた(発見研究と再現研究の結果を合わせて,オッズ比 2.90;95% CI 2.16~3.91;P=2.1×10-12).アルツハイマー病ではない 80~100 歳の rs75932628-T 保有者では,非保有者と比較して認知機能が低下していることも明らかになった(P=0.003).
この研究の結果から,TREM2 変異がアルツハイマー病の病態発生に関与することが強く示唆される.TREM2 は脳内で抗炎症の役割を果たすと報告されていることから,R47H 置換によって,炎症プロセスの抑制が障害されてアルツハイマー病の素因が増加する可能性がある.(米国国立老化研究所ほかから研究助成を受けた.)