高カルシウム血症と低カルシウム血症における G 蛋白質サブユニット α11 に影響を及ぼす変異
Mutations Affecting G-Protein Subunit α11 in Hypercalcemia and Hypocalcemia
M.A. Nesbit and Others
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症は,1 型,2 型,3 型の 3 つの異型を有する遺伝的に不均一な疾患である.1 型の原因は,カルシウム感知受容体の機能喪失型変異である.カルシウム感知受容体はグアニンヌクレオチド結合蛋白質(G 蛋白質)共役受容体の 1 つで,G 蛋白質サブユニットα11(Gα11)を介してシグナルを伝達する.3 型には,アダプター関連蛋白質複合体 2 σ1 サブユニット(AP2S1)の変異が関連しており,この変異はカルシウム感知受容体のエンドサイトーシスに変化をもたらす.われわれは,2 型は Gα11 の機能喪失型変異に起因するという仮説を立てた.その理由として,Gα11 はカルシウム感知受容体シグナル伝達に関与していること,そしてその遺伝子(GNA11)と 2 型の座位が染色体 19p13.3 に共局在していることがあげられる.われわれはまた,Gα11 機能獲得型変異には,常染色体優性低カルシウム血症 1 型を引き起こすカルシウム感知受容体の機能獲得型変異と同様に,低カルシウム血症を引き起こす可能性があると仮定した.
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症 2 型の患者のいる 1 家系と,非血縁の家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症患者で,カルシウム感知受容体をコードする遺伝子(CASR)または AP2S1 に変異を有しない 9 例において,GNA11 変異の解析を行った.非血縁の低カルシウム血症患者で,CASR 変異を有しない 8 例においても同解析を行った.さらに,ヒト胎児由来腎臓 293(HEK293)細胞において,GNA11 変異が Gα11 の蛋白構造と,カルシウム感知受容体のシグナル伝達に及ぼす影響を検討した.
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症 2 型の患者のいる家系では,保存された Gα11 のイソロイシンのインフレーム欠失(Ile200del)が認められた.非血縁の家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症患者 9 例では,1 例に GNA11 のミスセンス変異(Leu135Gln)が認められた.非血縁の低カルシウム血症患者 2 例では,GNA11 ミスセンス変異(Arg181Gln,Phe341Leu)が検出された.したがってこれらの患者は,常染色体優性低カルシウム血症 2 型を有することが確認された.4 つの GNA11 変異すべてから蛋白構造の破壊が予測され,in vitro 発現に基づく評価により,家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症 2 型に関連する変異は,カルシウム感知受容体を発現する細胞の細胞外カルシウム濃度の変化に対する感受性を低下させ,一方,常染色体優性低カルシウム血症 2 型に関連する変異は細胞の感受性を高めることが示された.
Gα11 の機能喪失型変異が家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症 2 型を引き起こし,Gα11 の機能獲得型変異が常染色体優性低カルシウム血症 2 型と呼ばれる臨床疾患の原因となる.(英国医学研究評議会ほかから研究助成を受けた.)