October 31, 2013 Vol. 369 No. 18
深在性皮膚糸状菌症と遺伝性 CARD9 欠損症
Deep Dermatophytosis and Inherited CARD9 Deficiency
F. Lanternier and Others
深在性皮膚糸状菌症は,皮膚糸状菌が引き起こす重症真菌感染症であり,生命に関わることもある.その特徴は,真皮・皮下組織に広範に浸潤し,リンパ節に播種する頻度が高く,中枢神経系に播種する場合もあることである.この疾患は,一般的な表在性皮膚糸状菌感染症と異なり,既知の免疫不全がない患者で報告されている.患者の多くは北アフリカの血縁関係にある多発家系の出身であることから,メンデルの遺伝法則に則った原因が強く示唆される.
チュニジア,アルジェリア,モロッコの血縁関係のない 8 家系の出身で,既知の免疫不全がない患者 17 例における深在性皮膚糸状菌症の臨床像を検討した.侵襲性真菌感染症のイラン人家系において CARD9(カスパーゼ動員ドメイン含有蛋白 9)欠損症が報告されていることから,これらの対象患者において CARD9 の塩基配列決定も行った.
臨床的に活動性の深在性皮膚糸状菌症であった 4 例が,それぞれ 28 歳,29 歳,37 歳,39 歳で死亡した.生存患者の年齢は 37~75 歳で,真菌または真菌以外の病原体による他の重症感染症は報告されなかった.血縁関係のない 7 家系のアルジェリア人,チュニジア人の患者 15 例は,創始者効果による Q289X CARD9 アレルのホモ接合体を有した.モロッコ人の同胞 2 例は,R101C CARD9 アレルがホモ接合であった.これらのアレルはいずれも,まれな有害多様体である.これらのアレルの家系内分離は,常染色体劣性遺伝と完全な臨床的浸透率に一致した.
深在性皮膚糸状菌症の患者全例に常染色体劣性遺伝性の CARD9 欠損症が認められた.深在性皮膚糸状菌症は,CARD9 欠損症の重要な臨床症状であると考えられる.(フランス国立研究機構ほかから研究助成を受けた.)