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July 4, 2013 Vol. 369 No. 1

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同種腎移植における尿中細胞の mRNA プロファイルと急性細胞拒絶反応
Urinary-Cell mRNA Profile and Acute Cellular Rejection in Kidney Allografts

M. Suthanthiran and Others

背景

腎移植における急性拒絶反応の診断に用いられる標準的な検査は腎生検である.非侵襲的検査が望ましい.

方 法

腎移植レシピエント 485 例の尿検体 4,300 検体を,移植後 3 日目から 12 ヵ月目まで前向きに採取した.尿中細胞のメッセンジャー RNA(mRNA)発現量を測定し,ロジスティック回帰を用いて移植腎の拒絶反応状態との相関を検討した.

結 果

CD3εmRNA とインターフェロン誘導蛋白 10(IP-10)mRNA のそれぞれの 18S リボソーム RNA(rRNA)で標準化した発現量と,18S rRNA の発現量から算出した「3 遺伝子特性」により,急性細胞拒絶反応を示す生検検体と拒絶反応を示さない生検検体とが区別された(ROC 曲線解析における曲線下面積 [AUC] 0.85,95%信頼区間 [CI] 0.78~0.91,P<0.001).ブートストラップリサンプリング法を用いた交差検証法による AUC の推定値は 0.83 であり,Hosmer-Lemeshow 検定による適合度は良好であった(P=0.77).外部の妥当性検証データセットにおける AUC は 0.74 であり(95% CI 0.61~0.86,P<0.001),われわれの最初のデータセットの AUC とのあいだに有意差は認められなかった(P=0.13).この特性により,急性細胞拒絶反応と,急性抗体関連型拒絶反応,および境界型変化とが区別された(AUC 0.78,95% CI 0.68~0.89,P<0.001).またこの特性によって,抗インターロイキン-2 受容体抗体を投与された患者と T 細胞除去抗体を投与された患者も区別され(P<0.001),いずれの患者群においても急性細胞拒絶反応の診断が得られた.尿路感染は特性に影響を及ぼさなかった(P=0.69).繰り返し採取された尿検体に基づく特性の平均軌道は,拒絶反応を示さなかった患者群では急性細胞拒絶反応の診断閾値より低いままであったが,拒絶反応を示した患者群では,生検で拒絶反応が示される数週前に急激に上昇した(P<0.001).

結 論

尿中細胞の CD3ε mRNA,IP-10 mRNA,18S rRNA の発現量から算出する分子特性は,同種腎移植における急性細胞拒絶反応の診断と予後予測に用いることができると考えられる.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 369 : 20 - 31. )