December 12, 2013 Vol. 369 No. 24
ワルファリン投与量の決定における薬理遺伝学的アルゴリズムと臨床的アルゴリズムとの比較
A Pharmacogenetic versus a Clinical Algorithm for Warfarin Dosing
S.E. Kimmel and Others
ワルファリン投与量を遺伝型(薬理遺伝学)に基づいて決定することの臨床的有用性は,小規模臨床試験や観察研究でしか検証されておらず,結果ははっきりしていない.
患者 1,015 例を,治療の最初の 5 日間のワルファリン投与量を,臨床的変数と遺伝型データの両方を用いる投与アルゴリズムに基づき決定する群と,臨床的変数のみを用いる投与アルゴリズムに基づき決定する群に無作為に割り付けた.治療の最初の 4 週間は,患者および医師全員にワルファリン投与量を知らせなかった.主要転帰は,治療 4 日目もしくは 5 日目から 28 日目までの,国際標準比(INR)が治療域内にあった時間の割合とした.
4 週の時点で,治療域内時間の割合の平均は,遺伝型に基づく群では 45.2%,臨床的変数に基づく群では 45.4%であった(補正後の差の平均 [遺伝型に基づく群-臨床的変数に基づく群] -0.2%,95%信頼区間 -3.4~3.1,P=0.91).2 つのアルゴリズム間で投与量の差が 1 mg/日以上と予測された患者においても,群間で有意差は認められなかった.しかし,投与量決定法と人種とのあいだに有意な相互作用が認められた(P=0.003).黒人患者では,治療域内時間の割合の平均は,遺伝型に基づく群のほうが臨床的変数に基づく群よりも低かった.INR 4 以上,重大な出血,血栓塞栓症から成る複合転帰の発生率に,投与量決定法による有意差は認められなかった.
遺伝型に基づくワルファリン投与量の決定によって,治療の最初の 4 週間の抗凝固管理は改善されなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所ほかから研究助成を受けた.COAG ClinicalTrials.gov番号:NCT00839657)