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March 13, 2014 Vol. 370 No. 11

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副腎性クッシング症候群における PKA 触媒サブユニットの恒常的活性化
Constitutive Activation of PKA Catalytic Subunit in Adrenal Cushing’s Syndrome

F. Beuschlein and Others

背景

コルチコトロピン非依存性クッシング症候群は,副腎皮質の腫瘍や過形成によって引き起こされる.コルチゾール産生副腎腺腫の分子病態は十分に解明されていない.

方 法

コルチゾール産生副腎腺腫を有する患者 10 例から採取した腫瘍組織検体のエクソーム塩基配列決定を行った.また,副腎皮質腫瘍を有する患者 171 例の候補遺伝子で頻度の高い変異を評価した.さらに,コルチゾール分泌性両側副腎過形成の患者 35 例において,ゲノムワイドコピー数解析を行った.これらの遺伝子欠損の影響を臨床,および in vitro で検討した.

結 果

エクソーム塩基配列決定によって,副腎腺腫 10 個中 8 個で,サイクリック AMP 依存性プロテインキナーゼ(プロテインキナーゼ A [PKA])の触媒サブユニットをコードする PRKACA の体細胞変異が明らかになった(c.617A→C が 7 個,c.595_596insCAC が 1 個).全体で,PRKACA の体細胞変異は顕性クッシング症候群患者の片側副腎腺腫 59 個中 22 個(37%)で同定されたが,無症候性高コルチゾール血症患者 40 例,その他の副腎腫瘍患者 82 例では検出されなかった.コルチゾール産生過形成患者 35 例中 5 例(第一度近親者 2 例を含む)が,PRKACA を含む 19 番染色体ゲノム領域の生殖細胞系列のコピー数増加(重複)を有していた.in vitro 実験で,PKA 触媒サブユニットのいずれの変異体においても,PKA 調節サブユニットによる抑制が障害されていることが示されたが,一方,生殖細胞系列に染色体のコピー数増加を有する患者の細胞では,PKA 触媒サブユニットの蛋白量が増加していた.いずれの場合も PKA の基礎活性が増加していた.

結 論

PKA 触媒サブユニットの遺伝子変化がヒトの疾患に関連していることが明らかになった.この遺伝子の生殖細胞系列における重複は両側副腎過形成を引き起こし,一方,体細胞におけるPRKACA の変異は片側コルチゾール産生副腎腺腫を引き起こした.(欧州委員会第 7 次フレームワークプログラムほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 370 : 1019 - 28. )