関節リウマチに対するトファシチニブとメトトレキサートとの比較
Tofacitinib versus Methotrexate in Rheumatoid Arthritis
E.B. Lee and Others
メトトレキサートは,リウマチに対する第一選択薬としてもっとも使用頻度が高い.われわれは,メトトレキサートの投与歴がないか,投与歴はあるが治療用量ではなかった関節リウマチ患者を対象に,経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬であるトファシチニブの単剤療法を,メトトレキサート単剤療法と比較した第 3 相試験の結果を報告する.
958 例を,トファシチニブ 5 mg を 1 日 2 回投与する群,トファシチニブ 10 mg を 1 日 2 回投与する群,メトトレキサートを 8 週間で 20 mg/週まで段階的に増量して投与する群に無作為に割り付けた.956 例が試験薬投与を受けた.6 ヵ月の時点での複合主要評価項目は,van der Heijde による修正総 Sharp スコア(0~448 点で,点数が高いほど関節の構造的損傷が大きいことを示す)のベースラインからの変化の平均と,米国リウマチ学会(ACR)70%改善(圧痛関節数と腫脹関節数がいずれも 70%以上減少し,その他の基準 5 項目中 3 項目が 70%以上改善することとした.5 項目は,患者による疼痛の評価,障害の程度,C 反応性蛋白値または赤血球沈降速度,患者による疾患の全般的評価,医師による疾患の全般的評価)を達成した患者の割合とした.
修正総 Sharp スコアのベースラインから 6 ヵ月までの変化の平均は,トファシチニブを投与した 2 群ではメトトレキサート群よりも有意に小さかったが,変化の程度は 3 群すべてでわずかであった(トファシチニブ 5 mg 群で 0.2 点,10 mg 群で<0.1 点であったのに対し,メトトレキサート群で 0.8 点 [両比較について P<0.001]).トファシチニブ投与例のうち,5 mg 群の 25.5%と 10 mg 群の 37.7%が,6 ヵ月の時点で ACR 70%改善を達成したのに対し,メトトレキサート群では 12.0%であった(両比較について P<0.001).トファシチニブ投与例 770 例中 31 例(4.0%)と,メトトレキサート投与例 186 例中 2 例(1.1%)に,帯状疱疹が発生した.癌の確定例(リンパ腫 3 例を含む)は,トファシチニブ投与例 5 例と,メトトレキサート投与例 1 例であった.トファシチニブは,クレアチニン値の上昇と,低比重リポ蛋白コレステロール値および高比重リポ蛋白コレステロール値の上昇に関連した.
メトトレキサートの投与歴がないか,投与歴はあるが治療用量ではなかった患者では,トファシチニブ単剤療法は,関節リウマチの徴候および症状の軽減と,関節の構造的損傷の進行の抑制にメトトレキサートよりも有効であった.トファシチニブの利益は,有害事象のリスクに照らし合わせて検討する必要がある.(Pfizer 社から研究助成を受けた.ORAL Start 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01039688)