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October 16, 2014 Vol. 371 No. 16

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医療過誤改革による救急診療への影響
The Effect of Malpractice Reform on Emergency Department Care

D.A. Waxman and Others

背景

多くの人は,医療過誤訴訟が怖いというだけで医師は不要なケアを指示しており,法改正によってそのような無駄な費用は削減されるのではないかと考えている.救急医は,費用のかかる防衛的な診療に結び付く可能性のある,情報が乏しく医療資源が豊富な環境で診療を行っている.救急診療における医療過誤の基準を「通常過失」から「重過失」に引き上げる法律の制定が,テキサス州(2003 年),ジョージア州(2005 年),サウスカロライナ州(2005 年)で行われた.われわれは,このような大きな改革によって診療が変化したかどうかを調査した.

方 法

出来高払い方式のメディケア受給者の 5%の無作為標本を用いて,改革を行った 3 つの州とそれらに隣接する州(対照)の病院における,1997~2011 年の救急受診をすべて同定した.準実験的デザインを用いて,改革を行った州と対照州とで,法律制定の前後における患者レベルの転帰を比較した.患者の特性,時間によって変化しない病院の特性,経時的動向について調整を行った.評価項目は CT または MRI の利用,救急受診 1 回あたりの請求額,入院率における,政策に起因する変化とした.

結 果

州と評価項目の組合せ 9 通り中,8 通りについて政策に起因する診療強度の低下は認められなかった.改革を行った 3 州のいずれにおいても,CT または MRI の利用率と入院率に低下は認められず,テキサス州とサウスカロライナ州では請求額の減少も認められなかった.ジョージア州では,改革は救急受診 1 回あたりの請求額の 3.6%(95%信頼区間 0.9~6.2)の減少に関連した.

結 論

テキサス州,ジョージア州,サウスカロライナ州において,救急医に関する医療過誤の基準を大幅に引き上げた法律は,画像検査の利用率,平均請求額,入院率によって評価した診療強度にほとんど影響を及ぼさなかった.(退役軍人局学術提携室ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 371 : 1518 - 25. )