December 18, 2014 Vol. 371 No. 25
高比重リポ蛋白コレステロール引抜き能と心血管イベントの発症
HDL Cholesterol Efflux Capacity and Incident Cardiovascular Events
A. Rohatgi and Others
高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール濃度が,アテローム性硬化の原因として関係しているかどうかは明らかにされていない.HDL コレステロール引抜き能は,さらに重要な因子である可能性がある.これは,HDL がマクロファージからコレステロールを受け取る能力で,コレステロール逆転送における重要なステップである.われわれは,多民族から成る大規模人口コホートにおいて,コレステロール引抜き能の疫学と,引抜き能とアテローム性心血管疾患発症の転帰との関連について検討した.
ダラス心臓研究の参加者である心血管疾患を有しない成人 2,924 人(確率に基づく人口サンプル)において,ベースライン時点で HDL コレステロール値,HDL 粒子濃度,コレステロール引抜き能を測定した.主要エンドポイントはアテローム性心血管疾患または心血管系の原因による死亡の複合とし,アテローム性心血管疾患は最初の非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,冠血行再建術と定義した.追跡期間中央値は 9.4 年であった.
HDL コレステロール値には従来の複数の危険因子および代謝変数との関連が認められたのとは対照的に,コレステロール引抜き能には,これらの因子とは最小の相関しか認められなかった.補正後の解析では,ベースラインの HDL コレステロール値に心血管イベントとの相関は認められなかった(ハザード比 1.08,95%信頼区間 [CI] 0.59~1.99).従来の危険因子,HDL コレステロール値,HDL 粒子濃度を含めた完全な補正モデルでは,コレステロール引抜き能の最高四分位群は,最低四分位群と比較して,心血管リスクに 67%の低下が認められた(ハザード比 0.33,95% CI 0.19~0.55).従来の危険因子にコレステロール引抜き能を追加すると,識別指数および再分類指数の改善と関連が認められた.
コレステロール引抜き能は,コレステロール逆転送における重要なステップを特徴付ける新たなバイオマーカーであり,人口ベースコホートにおいて心血管イベントの新規発症と負の相関が認められた.(ドナルド・W・レイノルズ財団ほかから研究助成を受けた.)