変異型クロイツフェルト–ヤコブ病患者の尿中のプリオン
Prions in the Urine of Patients with Variant Creutzfeldt–Jakob Disease
F. Moda and Others
伝染性海綿状脳症に関与する感染因子プリオンは,主にミスフォールドしたプリオン蛋白(PrPSc)で構成される.その独特の伝播機序と,プリオンに汚染された牛肉の摂取と関連付けられている変異型クロイツフェルト–ヤコブ病の出現により,公衆衛生上の懸念が生じている.変異型クロイツフェルト–ヤコブ病のプリオンは,疾患が無症候性に潜伏している人の体液中を循環していることが,エビデンスから示唆されている.
PrPSc が変異型クロイツフェルト–ヤコブ病患者の尿中に検出されるかどうかを検討するために,微量の PrPSc を増幅する蛋白ミスフォールディング循環増幅(PMCA)法を用いて,この蛋白を高感度で検出できるようにした.さまざまな伝染性海綿状脳症(変異型および孤発性クロイツフェルト–ヤコブ病,遺伝性のプリオン病)の患者,その他の変性または非変性神経疾患の患者,健常者の尿検体を分析した.
PrPSc は,変異型クロイツフェルト–ヤコブ病患者の尿中でのみ検出可能であり,この疾患に関連する典型的な電気泳動像を示した.PrPSc は,変異型クロイツフェルト–ヤコブ病患者の尿検体 14 検体中 13 検体で検出されたが,その他の神経疾患患者や健常対照者の尿検体 224 検体では検出されず,感度 92.9%(95%信頼区間 [CI] 66.1~99.8),特異度 100.0%(95% CI 98.4~100.0)と推定された.定量的 PMCA を用いて算出した尿中 PrPSc 濃度は,1×10-16 g/mL または 3×10-21 mol/mL と推定され,これを外挿すると,尿 1 mL あたりに PrPSc のオリゴマー粒子約 40~100 個が含まれたことになる.
変異型クロイツフェルト–ヤコブ病患者の尿検体には微量の PrPSc が含まれていた.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)