March 26, 2015 Vol. 372 No. 13
多枝冠動脈疾患に対するエベロリムス溶出性ステントとバイパス術との比較
Everolimus-Eluting Stents or Bypass Surgery for Multivessel Coronary Disease
S. Bangalore and Others
多枝冠動脈疾患患者における長期死亡率は,冠動脈バイパス術(CABG)後のほうが,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後よりも低いことが臨床試験および患者登録研究の結果から示されている.これらの先行分析では,第二世代薬剤溶出性ステントによる PCI についての評価は行っていない.
患者登録に基づく観察研究において,多枝冠動脈疾患に対して CABG を施行した患者の転帰を,エベロリムス溶出性ステントによる PCI を施行した患者の転帰と比較した.主要転帰は全死因死亡率とした.副次的転帰は,心筋梗塞,脳卒中,再血行再建術の発生率とした.傾向スコアマッチングを用いて,患者背景の類似する患者コホートを構成した.
適格患者 34,819 例のうち,エベロリムス溶出性ステントによる PCI を施行された 9,223 例と,CABG を施行された 9,223 例が傾向スコアが同程度であったため,解析対象とした.平均追跡期間 2.9 年で,エベロリムス溶出性ステントによる PCI は,CABG と比較して,死亡リスクは同程度であり(それぞれ年間 3.1%と 2.9%,ハザード比 1.04,95%信頼区間 [CI] 0.93~1.17,P=0.50),心筋梗塞のリスクは高く(年間 1.9% 対 1.1%,ハザード比 1.51,95% CI 1.29~1.77,P<0.001),再血行再建術のリスクも高く(年間 7.2% 対 3.1%,ハザード比 2.35,95% CI 2.14~2.58,P<0.001),脳卒中のリスクは低かった(年間 0.7% 対 1.0%,ハザード比 0.62,95% CI 0.50~0.76,P<0.001).PCI 群における,CABG 群よりも高い心筋梗塞のリスクは,完全血行再建であった患者では有意でなかったが,不完全血行再建であった患者では有意であった(交互作用について P=0.02).
現代の臨床診療における患者登録に基づく研究では,エベロリムス溶出性ステントによる PCI での死亡リスクは,CABG での死亡リスクと同程度であった.PCI のほうが,心筋梗塞のリスク(不完全血行再建となった患者)と,再血行再建術のリスクは高かったが,脳卒中のリスクは低かった.(Abbott Vascular 社から研究助成を受けた.)