April 16, 2015 Vol. 372 No. 16
脂質低下と心血管イベント減少におけるエボロクマブの有効性と安全性
Efficacy and Safety of Evolocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
M.S. Sabatine and Others
前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン 9 型(PCSK9)を阻害するモノクローナル抗体であるエボロクマブ(evolocumab)は,短期試験では低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値を有意に低下させることが示された.われわれは,より長期のデータを得る目的で 2 件の延長試験を行った.
エボロクマブの第 2 相または第 3 相試験(「親試験」)12 件のうち,いずれか 1 件に参加し終了した患者 4,465 例を 2 件の非盲検無作為化試験に登録した.親試験での試験群割付けにかかわらず,適格患者を,エボロクマブ(140 mg を 2 週ごと,または 420 mg を月 1 回投与)と標準療法を併用する群と,標準療法のみを行う群に,2:1 の割合で無作為に割り付けた.患者を中央値で 11.1 ヵ月間追跡し,脂質値,安全性,(事前に規定した探索的解析として)中央判定による死亡・心筋梗塞・不安定狭心症・冠血行再建・脳卒中・一過性脳虚血発作・心不全などの心血管イベントとした.2 試験のデータを統合した.
LDL コレステロール値の中央値は,標準療法単独群の 120 mg/dL に対し,エボロクマブ群では 48 mg/dL と,61%低下した(P<0.001).大半の有害事象は発生頻度が 2 群で同程度であったが,神経認知関連イベントは,エボロクマブ群でより高頻度に報告された.神経認知関連イベントを含む有害事象のリスクには,LDL コレステロール値の低下に基づく有意差は認められなかった.1 年の時点での心血管イベントの発生率は,標準療法群の 2.18%に対し,エボロクマブ群では 0.95%と低下した(エボロクマブ群のハザード比 0.47,95%信頼区間 0.28~0.78,P=0.003).
エボロクマブを,およそ 1 年間にわたり標準療法と併用することで,標準療法のみの場合と比較して,LDL コレステロール値が有意に低下し,事前に規定した探索的解析では,心血管イベントの発生率が低下することが示された.(Amgen 社から研究助成を受けた.OSLER-1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01439880,OSLER-2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01854918)